第三部 1979年
迷走する西ドイツ
忌まわしき老チェーカー その3
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存の技術で生産しやすい……」
「どういうことだ?」
「リッペ=ビーステルフェルト公にはな、弱みがあって、色々と金がかかる面がある。
公開されている王室予算を使うわけにはいかんし、または税金でということも出来ん。
そこでじゃ、ノースロックとロックウィードがそれに目を付けてな。
彼に、賂を送ることにしたのじゃよ」
「まさか、それが戦術機開発にも……」
「そうじゃ。
1956年の事じゃったかの、ドイツ国防軍へのロックウィード製の戦闘機の売りこみを進めた。
当時の国防相フランツ・シュトラウスも同席のもとで、F-104スターファイターを選定したのじゃ」
F-104スターファイターとは、ロッキード社が開発した超音速ジェット戦闘機である。
軽量で、機動性と高速性を極限にまで高めた機体で、米軍初のマッハ2級の超音速戦闘機でもあった。
西ドイツにおいては、916機のF-104が運用された。
だが事故率は非常に高く、およそ292機が失われ、未亡人製造機と称される機体でもあった。
日本でも配備され、栄光という愛称を持ち、三菱重工業がライセンス生産を担当した。
1986年(昭和61年)、米国からの援助相当分の36機が米軍に返還という形をとって、間接的に台湾に供与された。
「早く結論を言え、俺は忙しいんだ。
スパイのリストを出すか、出さないか……」
この時点でマサキは、質問者という意識を捨てて、対等になった。
彼は、ゲーレンの話が、ひと段落するタイミングを計っていたのだ。
「わしらに死ねというのと同じじゃ」
マサキは、その言葉がにわかに本当とは信じられなかった。
「じゃあ、勝手にすればいい」
マサキは、悠々と許可の言葉を告げる自分に自信が湧いた。
だが、本当の勝負はこれからだと気を引き締めていた。
「ではこうしよう。闇の組織を教えよう。
だが、わしらドイツ民族も、救ってくれ」
「いいだろう」
場面は変わって、西ドイツのケルン。
ここにある連邦憲法擁護庁の本部には、夜半というのに電話が鳴り響いていた。
「何、サラリーマンを名乗る怪しい外人がBND本部に乗り込んだだと!
乗り込んできたやつらは……」
「帰りやした」
「帰すな、この大馬鹿野郎!
手がかりが無くなっちまうじゃねえか」
彼等の後ろで、ワルサー社の自動拳銃P1を組んでいた別な男が、遮るように言った。
連邦国境警備隊(今日のドイツ連邦警察)からの出向者だった。
「ただのサラリーマンじゃねえな。こいつは面白くなってきたぜ」
男は、しり眼に振向いて、
「電算室に繋いでくれ」
「え」
「憲法擁護庁本部には、電算室があるだろう。
そこにはホストコンピューターがあって
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