ホビットの穴
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人へ呼びかける。
「はい」
「なにー?」
可奈美とチノは、それぞれ声を返した。
「待っててね! お姉ちゃんが、別の道から会いに行くからね!」
「はーい! 待ってるね!」
可奈美が元気な声で答えた。
「さあ! ハルトさん紗夜ちゃん! 妹たちが待つ向こう側に急ぐよ!」
チノはそう言いながら、ブロックを出ていく。
彼女を追いかけ、ハルトと紗夜も彼女に続く。
大きく道を回り、角を曲がり。
ココアの目の前に出現したのは、灰色の顔。
「____」
「きゃあああああああああああああっ!?」
灰色のそれが呻き声にも近い声を上げると、ココアがつんざくような悲鳴を上げる。
一方、灰色のそれは、首を左右に揺らしながら、手にした槍をココアへ振り上げる。
「ココアちゃん!」
顔を真っ青にしたハルトは、彼女へ駆けだし、その槍を素手で掴み、ココアの頭から反らす。
「はあっ!」
同時に、一気に蹴りを放つ。バランスを崩し、裏路地より大通りへと転がった怪物を追いながら、ハルトも大通りに躍り出る。
「グール……」
「か、怪物……!」
グール。
それは、知能を持たない怪物。
起き上がり、ハルトへ狙いを変えた怪物は、そのまま槍で突撃してくる。
ウィザードは槍先を掴み、その頭部を蹴り飛ばす。
一瞬目が赤くなったハルトの蹴りは、グールの頭から全身を砕く。
「やっぱりファントム……!」
すぐ近くに、いた。
黒い胴体の怪人。コウモリのように耳が大きく、石碑のような色味のそれは、胴体に刻み込まれた無数の目で獲物を探していた。
「片っ端から絶望させろ!」
手にした剣を振り上げるファントム。
魔力を持った人間、ゲートを絶望の末、自らと同じ怪物にしようと画策するそれは、周囲に灰色の下級ファントム、グールたちを従えながら、どんどん人々を追い立てる。
「待て!」
「待って! ハルトさん!」
飛び出そうとするハルトを、ココアが止める。
「どこ行くの!? 危ないよ!」
「それは……まだ逃げてない人が……!」
「保登さん、大丈夫です。それより、私達も逃げましょう!」
追いついてきた紗夜が、ココアの手を掴む。
「紗夜ちゃん! でも……」
「大丈夫です! 松菜さんも、逃げ際は分かっていますね?」
紗夜とハルトの目が合う。彼女の目は、ハルトへ一点の曇りもなかった。
「……うん! もちろん! ココアちゃん、チノちゃんにはこっちに来ないように伝えておいて!」
それ以上ココアの返答を待つことはない。
紗夜がココアを元居た路地へ連れ戻していくのを横目で見送りながら、ハルトは腰のホルスターから指輪を取り
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