ホビットの穴
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「はむっ!」
「おいひい!」
「はい」
三人の少女たちは、笑顔でそれを頬張る。
プレーンシュガー。洋菓子店でテイクアウトしたそれを、彼女たちは次々に味わっている。
「結局寄り道しちゃったね。随分色々と」
ハルトは三人が美味しそうに食べているのを眺めながら、自らもその砂糖菓子を口にする。
ざらざらとした口触り。
どれだけ人間に近づこうとしたとしても、怪人、ファントムである事実がある以上、彼女たちと美味しいという気持ちを共有するのは難しい。ざらざらとした下触りから、砂利を飲み込んでいるようだった。
「ハルトさん……」
「大丈夫。これが甘くておいしいことは知ってるから」
かつて、可奈美と体が入れ替わったとき。これまでの一生で一度のみ、ハルトは味覚を味わった。それが、真司が差し入れてくれたこのプレーンシュガーだった。
もう、あの味覚を味わうことはできない。
それを改めて受け止めたハルトは、味のない砂利団子を全て平らげた。
丁度それと等しいくらいの時、チノが足を止めた。
「……ここですね」
地図を見下ろしながら、チノはその場を探り当てた。
そこは、長い塀が並ぶ細道。地図によれば、この場所が宝物のゴール地点らしい。
結局、ラビットハウスと甘兎庵の目印も、大して役に立たなかった。方角が分からない中、子供の記憶を頼りに描かれた地図を地形だけで判別しながら来るのは骨が折れた。
「この穴を通るの?」
「結構小さいね」
可奈美とココアは、穴を覗き込みながら言った。
「ここから入るとどこに行けるの?」
「すぐに宝物の場所らしいけど、越えた先の詳細が大きな点で潰されて分からないかな」
ハルトはチノが持つ地図を覗き込みながら答えた。
「よっぽど興奮して描いたんだろうね。周囲の地形を塗りつぶすレベルでゴール地点書いてるし」
「そうですね。それにしてもこの穴、おじいちゃんの時からずっとあったものでしょうか?」
チノは静かに屈む。
彼女の長い髪がもう少しで地面に付こうとするレベルで姿勢を低くしないと潜れないレベルだった。
「そうなんじゃないかな? この穴をくぐっていくこと以外のことは想定してなさそうだし、この地図を描いた子、この目的地には毎回この穴を通っていたみたいだね」
ハルトがそう分析している間にも、チノは腕の力を駆使し、穴を通り抜けていった。彼女の足までが塀の向こうへ吸い込まれていった直後、彼女の声が届いてきた。
「こっちも裏路地です。でも、そっちの道よりもかなり狭いですね」
「一体何の用途で作られた道なんだよ」
ハルトは頭を抱える。
「きっと、昔の人たちの遊び心で作られたんだね!」
「かなり狭い通路ですけど、
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