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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・前編(ユウリ視点)
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を感じ、催促するように手のひらを上にして前後に動かす。だがわかってないのか、このオヤジは首を傾げるばかりで動こうとしない。
 ここは一度痛い目を見ないとわからないようだなと考えた俺は、口の中で呪文を唱えようとしたのだが。
「待ってユウリ! それただの恐喝だから!」
 必死の形相でミオが後ろから俺の腕にしがみついてきた。いつもは鈍くさいくせに、俺が呪文を放とうとするときは別人かと思うくらい素早く反応してきやがる。そんな彼女の姿に毒気を抜かれてしまった俺は、自然と手を下ろした。
 結局このオヤジから手間賃をもらうことは出来なかったが、予定より多くの材木を仕入れることが出来た。荷台に積めるだけ積んで金を渡せば、あとは船が停泊する港町に戻るだけだ。
「あっ……、ポカパマズさん!?」
 背後から声がしたので後ろを振り向くと、女が一人立っていた。買い物帰りなのか、荷物を提げたまま俺を凝視している。
「おいお前、この人のこと知ってるのか?」
 材木屋の店主は、目の前にいる女――おそらく店主の妻であろう――に問いかけた。
「ああ、あんたは五年前に婿入りしたから知らないんだね。この人はポカパマズさんと言って、ルドルフさんとこで療養してた人だよ」
 療養? 病気か何かだったのか?
 さらに謎は深まるが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「悪いが、俺はポカパマズじゃない。アリアハンから来た勇者だ」
「え……、あっ! まあいやだ人違いだなんて!! それに、良く見たらとってもイケメン!!」
 ……一体この村の連中は、俺とポカパマズをどういう基準で比べているんだ?
「あんた、勇者だったのかい? と言うことは、アリアハンの英雄の息子が魔王を倒す旅に出たって噂は本当だったのか」
 意外そうな顔で店主が言う。ポカパマズではないことを強調するためにあえて勇者と名乗ったが、どうやらこんな田舎でも俺の噂は広がっていたらしい。
 女の方も、人違いだとわかった途端、なぜか俺に興味を示してきた。というかさっきから人の顔ばかりじろじろ見ていて、こちらとしては気分が悪い。
「おい。なんでこの村は俺の姿を見るたびに『ポカパマズ』とか言う名前で呼ぶんだ? 俺はそんなふざけた名前じゃないんだが」
 俺は刺のある言い方で、店主の妻に言い立てる。すると女は慌てた様子で答えた。
「まあ、気を悪くさせちゃってごめんなさいね。ポカパマズさんは、十年くらい前にここにやって来た旅人さんでね、怪我をして倒れていたところをルドルフさんが見つけて介抱したんだよ。あなたの後ろ姿がポカパマズさんに似てたから、つい彼の名前を呼んじゃったの」
「あの、そのポカパカスさんはそんなにユウリに似てるんですか?」
 俺が疑問に思ったことを、ミオが間に入って店主に尋ねる。と言うか、いい加減名前を覚え
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