第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・前編(ユウリ視点)
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?」
不審に思いながらも、俺は男の前を通り過ぎる。すると突然、その男は何かに気づいたように目を丸くしたではないか。
「その剣は……!? もしかしてあなた、ポカパマズさん!?」
「は!?」
何の前触れもなくいきなり珍妙な名前を呼ばれ、思わず俺は素っ頓狂な声を上げる。それに反応したほかの三人も、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「何? 誰が何だって?」
バカザルが目を輝かせながら俺と男の間に割り込んできた。おそらく俺をイジれる絶好の材料を見つけたのだろう。俺はすぐにこいつの鳩尾に肘鉄を食らわせる。
「ぐはっ!!」
俺の一撃にバカザルは体をくの字にして倒れ伏した。そして、何が起こったのかわからず呆然としている男に俺は問いかける。
「おい、今俺のことを何て呼んだ?」
「え、だから、『ポカパマズ』さんと……。はっ、よく見たら人違いでしたか!! すみません!!」
男は慌てて俺に謝ると、足早に走り去った。呼び止めようかとも思ったが、年の割に足が速く、気づいたときにはもう姿が見えなくなっていた。
「なんかユウリちゃんが持ってる剣を見て、ポカパンパースさんとか言ってたよね?」
「違うよシーラ。ポカポンタスさんだよ」
「『ポカパマズ』だろ。いやそれも違うが……」
自分で言ってて理解できなくなってきた。一体『ポカパマズ』とは何なんだ?
その後も、道行く人々にたびたび『ポカパマズ』と呼ばれ、俺の脳内は混乱を極めていた。
気になるのは、その名を呼ぶ人のほとんどが俺よりも年上、おそらく二十代以上だということだ。それ以外の人間……つまり俺と同年代かそれより下の子供は、俺を見ても何も反応しない。
さらに、その名を呼ぶ前に必ずと言っていいほど、俺の顔ではなく背中に背負っている稲妻の剣を一瞥するのだ。いったいポカパマズという名前と稲妻の剣に、何の関係があるのだろうか?
「ユウリちゃん。気になるのはわかるけど先に用事を済ませちゃおう?」
何かを察したのか、ザルウサギがいち早く気付いて俺に尋ねるが、こいつに言われなくてもわかっている。俺は足早に目的の場所へと向かった。
「いや〜、悪いね、沢山運んでもらっちゃって。買い付けてくれるお得意さんが来なくなっちゃって、商売上がったりだったんだよ」
明朗な声で眉を下げる材木屋の店主は、荷馬車を引いた俺たちがやって来るなり満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。
「ここへ来る途中、魔物の群れは俺たちが倒した。当分は村周辺に来ることもないだろう」
「そりゃあありがたい。村の人たちも安心するだろう」
安堵する店主に、俺は手を差し出して反応を待つ。
「あの……、なにか?」
「魔物を倒した手間賃くらい払うべきだろうが。ボサッとしないでとっとと渡せ」
キョトンとする店主に苛立ち
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