第3部
ムオル〜バハラタ
父の軌跡・前編(ユウリ視点)
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、早速停泊した港町で船の材料を購入することになったのだが――。
「材料がない!?」
町の船大工に仕入れ先を聞いたところ、今は不況で材料が手に入らないのだという。船の材料となる材木が手に入るのは山をひとつ越えた先にある、ムオルという村にあるらしい。しかし最近ムオル周辺は人を襲う魔物が現れ始め、被害者も何人かいるという。さらに冒険者もいないこの港町では、ムオルまでたどり着ける人間はほとんどいないそうだ。
「ふん。なら俺たちがその材木を取りに行ってやる。その代わり、手間賃は材料代から差し引いてもらうからな」
俺の中では当然の交渉内容だったのだが、他の三人は一様に微妙な顔をしている。金に無頓着なこいつらの顔色をうかがってる暇などなく、俺はさっさと材木の仕入れ先の店主に話を付け、ムオルへの行き先を教わった。
「ついでに他のお客さんの分も仕入れてきてくれないか? 荷馬車を貸してあげるから、この荷台に積めるだけ材木を運んできて欲しいんだ」
そう言ってしたたかな店主が用意したのは、大きな荷車と二頭の馬だった。……いっそこっちが依頼料をもらうべきではないだろうか?
そんなわけで俺たちは今、ムオルの村を目指している。厚い雲が垂れ込める空の下、俺たちは二日かけて荷馬車を引き、ようやく目的の場所に到着した。ちなみに手綱は俺とバカザルで交代で引いていた。途中何度か魔物の群れに遭遇したものの、ヤマタノオロチとの戦いに比べたらあまりにも手応えが無さすぎて、特筆すべき事がなかったのは言うまでもない。
「あっ、あれ、看板かな?」
入り口に立てかけてある古ぼけた看板に目をやると、確かに『ムオルの村』と書いてある。
辺りを見回すが、村を守る警備の人間もいない。一応魔物よけの聖水を町の周辺に撒いてある形跡はあるように見えるが、田舎女の故郷よりも危機感のない村だ。
村に入ると、ぽつぽつと家や建物が見えてきた。次第に犬を連れた老人や、畑の周りを走り回る小さな子供たちとすれ違ったりするが、至ってのどかなところである。
「なんだか平和な村だね」
「お前の第二の故郷なんじゃないのか?」
のんきに呟く田舎女の言葉に、俺はつい軽口を叩く。案の定、俺の言葉に彼女はムッとした顔をした。
「もう! それって遠回しに田舎者って言ってるよね!?」
「そうやってムキになるってことは自分で田舎者だと認めてるってことだろ」
「べ……、別に田舎者だっていいじゃない!! 田舎には田舎の良さがあるんだから!!」
何を開き直ってるんだ、この間抜け女は。
俺は呆れた顔で彼女から視線を外すと、正面からやってくる一人の男に目を留めた。するとすぐにその男もこちらに気づいたのか、一瞬で俺と目が合った。しかし男は、そのまま俺をじっと見つめると、動かなくなってしまった。
「……
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