第二章
[8]前話
「朽ちたら朽ちたでだ」
「何かに用いる」
「そうされますか」
「船を」
「巻にしよう」
船が朽ちたならというのだ。
「そうしよう、ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「何かありますか」
「船は長い間役に立ってくれた」
帝は感慨を込めて言われた。
「だからな」
「それで、ですか」
「長い間役に立ってくれたので」
「それ故に」
「船のことを後世にも伝えたい」
船のことを想われてのお言葉だった。
「この度はな」
「そうですか、それではですね」
「これよりですね」
「その為に」
「何かをしますか」
「そうしよう、船の名は枯野だが」
名のことから言われた。
「その名を後世に残し薪に使っても残ったものを用い」
「そしてですか」
「そのうえで、ですか」
「さらにですか」
「何かを造ろう」
船を薪にして残った部分でというのだ。
「よいな」
「わかりました」
「では何を造るか」
「残った木をご覧になられて」
「考えよう」
こう言われてだった。
帝は船、枯野がその役目を終えるとかなりの部分を薪にされた。そしてその残った部分をご覧になられてだった。
そのうえでだ、周りに言われた。
「琴にするか」
「琴ですか」
「それを造られますか」
「残った部分で」
「そうされますか」
「今思った」
残った部分をご覧になられてというのだ。
「琴を造りだ」
「そして音を奏でる」
「そうすべきだと」
「その様にですか」
「だからな」
それでというのだ。
「今よりそうせよ」
「わかりました、それでは」
「残った部分で琴を造ります」
「そして音を奏でさせます」
「その様にします」
廷臣達も応えてだった。
すぐに琴が造られた、そうして音が奏でられると。
「素晴らしい音色だな」
「全く以て」
「何と澄んだ音か」
「ここまで澄んだ音を出すとは」
「素晴らしい琴です」
「しかもだ」
帝はその琴の音を聴かれながらさらに言われた。
「遠くまで響く、事にまでなってもな」
「素晴らしいですね」
「何と素晴らしい木か」
「実に」
「全くだ、ではこの木のことを詠おう」
こう言われ帝ご自身が謡われた、そのうえで木を讃えられた。日本がまだ若い頃の話である。その頃の日本にはこうした木があり船にも琴にもなり帝に歌で讃えられたのだ。そのことを今ここに書かせて頂いた。一人でも多くの人が読んで頂ければ幸いである。
枯野 完
2023・9・13
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