第一章
[2]次話
枯野
和泉の国に一本のとてつもなく大きく高い木があった。
朝日を浴びると影は淡路に及び夕日に当たれば高安山にまで達した、そこまでの木だった。
その木をご覧になられてだ、応神帝は言われた。
「この木で船を造るか」
「この巨大な木で、ですか」
「船を造るのですか」
「そうするのですか」
「そしてだ」
帝は周りにさらに言われた。
「その船を用いてだ」
「どうされますか」
「一体」
「船を用いて」
「そしてだ」
そのうえでというのだ。
「朝と夕に淡路の水をだ」
「取りに行くのですか」
「朝と夕に」
「そうされますか」
「そしてその水をだ」
帝は周りに言われた。
「神々に捧げ朕もだ」
「飲まれますか」
「そうされますか」
「そうしよう」
こう言われてだった。
帝はその木を用いて船を造らせた、そしてだった。
十丈もの大きさの船が出来た、その船はというと。
「水の上に軽々と浮きまして」
「風の様に進みます」
「実に素晴らしい船です」
「毎日朝と夕に淡路まで行き」
「そしてです」
「こうしてだ」
帝は船で運ばれた水を飲まれつつ言われた。
「神々に捧げてだ」
「帝が飲まれる水をですね」
「運んでくれますね」
「左様ですね」
「実に素晴らしい船だ」
帝は満足して言われた。
「あの木は実に役に立ってくれているな」
「左様ですね」
「ただ大きいだけでなくです」
「こうして役に立つとは」
「実に素晴らしい木です」
廷臣達も口々にその通りと応えた、船は毎日朝と夕に淡路まで水を運び神々と帝にそれを捧げていた、だが。
「そうか、もう船を造って長いからな」
「徐々にです」
「船が朽ちてきています」
「そろそろ寿命です」
「前に進むことも出来なくなりそうです」
「どの様なものも壊れてだ」
帝は船が朽ちてきていることを聞かれて言われた。
「命もだ」
「なくなりますね」
「この世にあるものは全て」
「そうなりますね」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「残念に思ってもな」
「これは運命である」
「朽ちることは」
「だから受け入れるしかないですね」
「そうだ、受け入れてだ」
そうしてというのだ。
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