第一章
[2]次話
桑の木の下で
天宮に皇蛾という仙女がいた。
切れ長の目に細面に長く見事な黒髪を持つ中背でほっそりとした女である、日々天宮で暮らす者が使う織物を作っていたが。
天帝はその彼女に対してある日こんなことを言った。
「そなたはやがて若者と夫婦になるな」
「そうなのですか」
「先程そなたのことを占ったが」
そうすると、というのだ。
「そう出た、ある木の下で出会いな」
「そうしてですか」
「互いに惹かれ合い」
そうなりというのだ。
「一人の子を産む」
「それは何よりです。実はです」
皇蛾は天帝の話を聞いて微笑んで答えた。
「私もそろそろ」
「伴侶を得てか」
「子を産みたいと思っていました」
「その年齢になったからだな」
「はい」
それ故にというのだ。
「仙人の歳ですが」
「普通の人間ではなくな」
「その年齢になったので」
仙女即ち仙術を備えたなら寿命は普通の人間とは違う、だがそれでも年齢を重ねていくものでというのだ。
「ですから」
「それでだな」
「そろそろと思っていましたが」
「そうか、それではな」
「その占いのままですね」
「そなたは結ばれ子を得るからな」
「楽しみにしています」
「そしてその子はしかと育てるのだ」
天帝は皇蛾にこうも言った。
「その子は大事を為す」
「長じて」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
「その子をな」
「育てることですね」
「確かにな。いいな」
「わかりました」
皇蛾は天帝の話に微笑んで応えた、そして。
ある日休みの日に天の川に筏を出してそれに乗って遊んでいた、そうしているとやがて西海のほとりにある窮桑という木の傍にきた、その木を見てだった。
皇蛾は若しやと思うとそこに長身で眉目が整い知性と清潔さに満ちた風貌の若者がいた、その若者を見てだった。
皇蛾はその瞬間に惚れた、それは若者もであり。
彼女にだ、自分から言った。
「貴方の様な美しい方に出会えるとは」
「私もです、実は」
ここで自分のことと占いのことを話した、すると。
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