第一章
[2]次話
黒薔薇
黒薔薇は縁起が悪いという、けれど今の私は今度新調するドレスにあえてその黒薔薇を入れることにした。
深紅の背中が見事に開いたひらひらとした丈の長いスカートのドレスだ、そこに黒薔薇をあしらうのだ。そのデザインを見てだった。
デザイナーの人は唸って私に言った。
「これはまた」
「独特ね」
「はい、パーティーに使われますよね」
「そうよ」
その為のドレスだ、私はドレスを確認してくれた知り合いのデザイナーの人に微笑んで答えた。
「そのつもりでよ」
「ご自身でデザインされて」
「それで着るのよ」
「そうですか、これはです」
デザイナーの人はチェックを続けつつ言った。
「もうです」
「どうしたのかしら」
「いえ、カルメンの様な」
「そうよ、カルメンはダリアだけれどね」
歌劇の方で相手にあげる、それがまた絵になっている。
「私はね」
「薔薇それも黒薔薇ですね」
「赤にね。それでいくわ」
「パーティーに」
「そしてね」
そのうえでだ。
「注目されるわ、今度のパーティーはね」
「貴女にとって勝負の時ですね」
「だからね。これでいくわ」
「わかりました、それでなのですが」
デザイナーの人は私にさらに言ってきた。
「私としてはこのデザインでいいと思いますので」
「作っていいわね」
「そうされて下さい」
「それではね」
私は微笑んで応えた、そうしてだった。
そのパーティー、色々な業界の人達が出席するそれに自分でデザインしたスカーレッドの生地に黒薔薇をあしらったドレスを着ていった、履くのは赤のハイヒールで髪の毛もセットしてメイクは普段より派手にした、すると。
「へえ、あの人かい本当に」
「普段とイメージ違うな」
「まるで別人だよ」
「これまでは清純派だったのに」
「妖艶だな」
「こんな一面があるんだな」
私を見て話していた、そして。
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