第四話 吸血鬼の話その十
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「この会場にな」
「あれっ、そうだったんですか」
「最初からですか」
「おられたんですか」
「いた」
あの声だった。二人、とりわけ五代はだ。
その声を聞いてだ。瞬時に身構えた。その彼と共にだ。
一条もだ。声の方を見たのだった。そこはだ。
人だかりができて見えない。しかしだった。
そこにいるのはわかった。彼がだ。それでだった。
二人はだ。それぞれ身構えたまま言うのだった。
「あそこですね」
「そうだな。あの中にな」
「奴がいます」
「スサノオが」
「ああ、あの方がですか」
吸血鬼も彼等のそのやり取りを聞いて述べる。
「やっぱりそうなんですか」
「うん、間違いない」
「声でわかる。それにこの気配」
「圧倒的なプレッシャー」
そうしたものまで感じてだ。二人はわかったのだ。
そうしてだった。その人だかりを見る。やがてだ。
その人だかりの中からだ。彼が出て来たのだった。
吸血鬼の礼装のそのタキシードにマントでだ。髪の毛は一本もない。
肌はやはり白く目は血走りだ。口からは普通の吸血鬼よりも大きく鋭い牙がある。その姿を見るまでもなくだ。二人は既に確信していた。
そしてだ。本人に対してだ。直接にだった。
その名前をだ。呼んだのだった。
「スサノオ」
「やはりいたか」
「ふむ」
それを聞いてだ。その声でだ。
その吸血鬼のマスター、スサノオが言ってきた。
「来ているのはわかっていた」
「そちらもか」
「わかっていたというのか」
「如何にも」
その通りだと答えてだった。そうしてだ。
スサノオはだ。二人の頭に直接語り掛けてきたのだった。
『さて、それではだ』
『頭の中にか』
『直接語り掛けて来るか』
『如何にも』
その通りだとだ。答えきたスサノオだった。
『君達の聞きたいことはわかっている』
『この世界で何をしている』
『何を考えてだ』
『既にわかっていると思うが』
スサノオは頭の中で笑ってみせて述べた。
『最早な』
『この世界でも見ているんだな』
『人間を』
『そう、私は永遠の退屈の牢獄の中にいる』
そこから逃れることはまだできていない。それでだというのだ。
スサノオはだ。二人にだ。さらに語り掛けてきた。
『その退屈を紛らわせる為にだ』
『人を吸血鬼として助け』
『そうしてか』
『そうだ。人間を見ている』
このことはだ。やはり同じだった。
スサノオは自らの口で言いだ。そしてだ。
二人にだ。さらに話してみせた。
『ただし。この世界ではだ』
『この世界では!?』
『一体何をしているというのだ』
『戦うことはしていない』
それはしていないというのだ。これも五代達の見た通りだった。
『見ているだけだ』
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