第二章
[8]前話
「いいでしょ」
「自分の奥さんがね」
「だから今日は美容院に行って」
そうしてというのだ。
「さらに奇麗になってくるわ」
「期待していていいかな」
「していていいわよ」
こう返してだった。
公佳は美容院に行った、そして馴染みの美容師予約を入れていた彼に対してあれこれと注文してだった。
髪を整えてもらった、それが終わってから言うのだった。
「一番大事なのはね」
「白髪隠しですね」
「それよ」
まさにとだ、若い女性の美容師に真剣な顔で言った。
「やっぱりどうしても六十になるとね」
「髪の毛が、ですね」
「減ったり白くなったりするから」
そうなることを話すのだった。
「私は減らないけれど」
「白くなっているからですか」
「赤くして」
その色に染めてというのだ。
「隠すのよ、髪の毛のことはここでしてもらって」
「他のことはですね」
「お金の許す限り自分で手入れもして」
そうしてというのだ。
「やっていってるわ」
「そうですか」
「そう、そしてね」
それでというのだ。
「このお店でこれだと思った美容師さんがね」
「私だからですか」
「何時もお願いしてるのよ、こだわりがないと」
そうでなければというのだ。
「奇麗にはね」
「なれないですか」
「そう思うわ、じゃあまたね」
「はい、いらして下さい」
その美容師は公佳に笑顔で応えた、そうしてだった。
家に意気揚々として帰った、そのうえで夫に自分の今の髪を見せた。
「どうかしら」
「いいね、奇麗だよ」
これが夫の返事だった。
「何か僕も白くなったのをね」
自分の白髪を撫でつつ話した。
「黒くしようかな」
「あなたは染めなくていいわよ」
妻はこう返した。
「それよりもセットした方がいいわ」
「そうなんだ」
「ええ、じゃあ今度美容院行ってみる？」
「そうしようかな、ずっと散髪屋さんだったけれど」
「美容院も悪くないわよ」
「それじゃあ考えてみるよ」
「奥さんも一緒よ」
妻は夫に笑って話した。
「自分の旦那さんはずっとね」
「恰好よくあって欲しいんだ」
「そうよ、だからね」
「じゃあ本当に行こうかな」
「幾つになってもね」
「奇麗で格好よくだね」
「こだわりを持ってそうであることよ」
こう言ってだった。
紅茶を煎れて二人で飲んだ、その時のカップもこだわった奇麗なものだった、それで美味しく飲んだのだった。
美容師にこだわる妻 完
２０２３・１１・２５
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