第一章
[2]次話
狼少年は真実を言っても
嘘は吐かない、だが。
小学六年生の谷本秀治黒髪を短くしていて太い海苔の様な眉と四角い顔に小さな目を持つ長身の彼はよく周りに言われていた。
「お前口が過ぎるからな」
「あまり言わない方がいいぞ」
「あれこれ言うけれどね」
「そこは気を付けてね」
「いや、俺嘘言ってないだろ」
谷本はクラスメイト達に言われていつもこう反論した。
「事実だけをな」
「だからそれでもだよ」
「あまり言うなって言ってるんだよ」
「それが事実でもね」
「結構嫌な時あるから」
「事実を言って何が悪いんだ」
谷本はさらに言うのが常だった。
「狼少年よりいいだろ」
「ああ、嘘吐きのな」
「あの童話な」
「最後は本当に狼出ても信じてもらえなくて」
「羊食べられるのよね」
「嘘吐きは駄目なんだ」
確かな声でだ、谷本は言った。
「地獄で閻魔さんに舌を抜かれるぞ」
「そう言われてるな」
「地獄で悪いことを調べられている時に」
「鏡にやったことが出て」
「舌を抜かれるのよね」
「悪いことをしたら報いを受けるんだ」
強い声で言った。
「だから僕は本当のことしか言わないぞ」
「それでもあれこれ言うなよ」
「正直嫌なことあるんだよ」
「それが本当のことでもね」
「せめて言わないでよ」
「何で本当のことを言ったら駄目なんだ」
彼はそれがわからなかった、それで尊敬する祖父の栄太郎に聞くことにした。彼は父の実家で暮らしているが。
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