第3部
ジパング
新たなる国
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こうなるかも、とは思っていたが、実際最悪の状況に陥ると、こうも恐ろしく映るものなのだろうか。なぜそこまでヒミコ様を盲信しているのか、この国の人間でもない私がわかるわけがない。だがそれと同時に、これほどまでヒミコ様は皆に慕われていたのだと言うことが理解できた。それはヒミコ様に化けたオロチではなく、ヒミコ様として国を守ろうとしたアンジュさんの功績に他ならない。
けれど今のままでは、この国の未来を案じていたアンジュさんの想いを成し遂げることはできない。なんとかしてこの人たちの考えを変えていかなければ――。
「待ってください!!」
突然大声で叫んだ女性の声に、口々に叫んでいた村人たちの視線が声のした方に向けられる。その先にいたのは、ヒイラギさんとヤヨイさんだった。
「この人たちの言っていることは本当です!!あの人たちのお陰で、オロチは倒されたんです!!」
二人の姿に、村人たちはどよめく。
「ヒイラギさん!? あんた、娘さんを亡くしたんじゃ……」
「ユウリさんたちは、生け贄となったヤヨイを救うため、自らオロチを倒すことを約束してくれました!! そしてその言葉通り、彼らはオロチを倒してくれたんです!!」
ヒイラギさんの叫びに、村人たちの瞳が揺れ動く。
「お母さんは、私に生きて欲しいから、生け贄に出さないために私を死んだ者として家から一歩も外に出さないようにしてました。けれどそれを聞いたユウリさんたちが、私たちを見かねて助けてくれたんです!! 彼らはとても優しくて強い人たちなんです!!」
普段は人見知りなヤヨイさんも、大声を張り上げて説得している。その様子に、私は胸に熱いものがこみ上げた。
「私が皆の前にいられるのは、ユウリさんたちのお陰なんです!! だからどうか、彼らの言葉を信じてください!!」
ヤヨイさんが言い終えたときには、辺りは静まり返っていた。
「……おれの妹も、生け贄に選ばれたくないから、普段は男の格好をしていたんだ」
「私の娘もよ……。でも、もうその必要はないってこと?」
誰に問いかけるわけでもなく、数人の村人が震えた声で呟く。それを聞き取ったユウリはすぐさま答えた。
「そうだ。オロチはもういない。だから性別を偽る必要はないんだ」
その答えに、何人かの人たちは喜びに打ち震えた。
「だが、本物のヒミコももういない。この本によると、ヒミコはこの国を守るため、何年も前に自らオロチの犠牲となったと書かれている」
『!!??』
ユウリの言葉に、全員が息を飲む音が聞こえた。
「そんな……、ヒミコ様が……」
「オロチに喰われたってことか!?」
やはりヒミコ様の死は、彼らには受け入れがたい事実のようだ。再び疑心に陥りそうな村人たちに、ユウリはさらに言葉を重ねる。
「この本は、ヒミコの日記だ。だが、お前たちには
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