シスト
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ココアとチノ。
聖杯戦争に決して関わることのない彼女たちは、それぞれ他愛のない話をしている。
「……やっぱり、二人には隠しておくの? ファントムのこと」
「そうだね」
ハルトは静かに頷く。
やがてココアは叫び出し、チノに抱き着いている。チノが呆れた顔をしながらココアを抑えているが、満更でもないようで、それほど強くは抵抗してない。
「二人……というより、聖杯戦争に関わりのない人にとって、俺はただの喫茶店の店員だよ」
「そうだね。私も刀使じゃなくて、ただのサバ読みのフリーターだからね」
実年齢十四歳、ラビットハウスの経歴書記載年齢十六歳の可奈美が言った。
「そろそろ行くよ、二人とも」
ハルトが声をかけると、二人は慌ててハルトへ駆け寄ってくる。
「うん! 行こう!」
「ココアさん、ちゃんと探してください」
「まあまあ。折角だし、ゆっくりやろうよ」
ハルトは改めて地図の道に指を当てる。何度も今いる道と地図の道の形を確認し、やがて「こっちだ」と急ぎ足で曲がり角を曲がる。
そのとき。
「きゃっ!」
丁度、曲がり角から来ようとしていた人物とぶつかりかける。倒れかけた相手の手を取り、何とか支える。
「ご、ごめんなさい!」
「こちらこそ……松菜さん?」
自らの苗字が呼ばれると同時に、相手の長いウェーブかかった髪が手首に触れる。
「紗夜さん?」
聖杯戦争の元参加者、氷川紗夜。
ラビットハウス付近にある甘味処で住み込みのバイトをしている少女。
もう少しでハルトの背丈に届きそうなほどの長身の彼女は、その長い前髪をくるくると指で弄び始めた。
「お、お久しぶりです」
「そうだね、久しぶり。元気?」
「は、はい……」
彼女は、ハルトと目を合わせてくれない。一方、彼女の視線は逃げるように可奈美やココア、チノに注がれていた。
「保登さんに衛藤さんも……ここで何を?」
「シストだよ!」
ココアが明るくハルトが持つ地図を指差す。
「私たちやったことなかったから、チノちゃんに可奈美ちゃん、ハルトさんと一緒に回ってるの!」
「シスト、ですか……」
紗夜は顎に手を当てながら頷いた。
「紗夜さんはやったことある?」
「幼い頃に何度か……でも、日菜がすぐに見つけるから、経験と呼べるほどではありませんね」
「ああ……」
彼女の返答に頷きながら、ハルトは紗夜の妹を思い浮かべた。紗夜と同じ顔ながら、紗夜とは真逆に明るさが服を着たような少女、氷川日菜。彼女ならば、子供向けの謎解きなどあっという間に解けるだろう。
そんなハルトと紗夜の間に、ココアが顔を入れた。
「ねえ! 紗夜ちゃんも一緒にシストに参加しよう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ