シスト
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ほほ笑む。
「それだとすると、もしかしてスタート地点のラビットハウス自体が気まぐれで描いたものである可能性まで浮上してくるんだけど……」
「それは大丈夫ですよ。地形から、ラビットハウスは間違ってなさそうですから」
チノが補足した。
危うく当てのない旅になるところだったハルトはほっと胸を撫で下ろす。
「それにしても、何でウチの額縁にシストの地図なんてあったのかな?」
ココアが頬に指を当てながら呟いた。
チノが「そうですね」と少し考えだす。
「現物はかなり古かったですし、あの絵が置かれたときに入れられたのでしょう」
「でも、私たちあの絵何度も掃除しているよ? よっぽど固定されていたんだね」
「そうですね。父に聞いたところ、あの絵は祖父が若いときに書いたそうです。もしかしたら、祖父の代のシストなのかもしれません」
「それじゃあ、もしかしたら何十年も前の人たちの宝物があるのかもしれないね!」
「何十年も前の人たちか……」
ハルトはココアの言葉を繰り返す。
「それは確かにロマンを感じるね。もしかしたら、今じゃ手に入らないお宝があったりして」
「そう考えると、ますます楽しみになって来たね! これまで止まっていた分、取り戻すよ!」
「あ、待ってココアちゃん!」
先にぐいぐいと急ごうとするココアを、ハルトが止める。
「これ……もしかして、道じゃなくて川なんじゃない?」
「ええ!?」
ハルトの指摘に、ココアは口をあんぐりと開けた。
「だって、よく見たらここ通路が塞がってるし。丁度逆側に川があるじゃん」
「え? でも、この道を追いかけてみれば……」
「子供の地図ですから……」
少し口をきっと結びながら、チノが擁護に走る。
つまり、これから先はこれを書いた推定少年期のチノの祖父の間違いも考慮しながら進まなければならないということになる。店のマークのみならず、地形までも。
「だったら、あっちが……いや、でも形が違う……それとも、この縮尺ミスも子供の勘違いで済ませていいのか?」
ハルトはぶつぶつと地図を見ながら周囲を探す。
やがて走り出し、壁にぶつかってはまた別の方向へ足を回転させる。
「いや、こっちには確か……だから、この形の場所の候補は……」
「ハルトさん……一番張り切ってる……!」
ハルトを見ながら、ココアが唖然とする。
「とても楽しそうですね」
「うん! 今までは、私たちにちょっと遠慮しているみたいだったもんね!」
ココアとチノの反応に、ハルトは足を止めた。
そんなハルトの袖を、可奈美が引っ張った。
「ハルトさんハルトさん。良かったね、前から変わったって」
「……そうだね」
ハルトはほほ笑む。
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