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家賃を出しても
第二章

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「知らないな」
「そうよね」
「けれど俺達は言うなら居候でな」
「お義兄さんのお部屋だから」
「兄貴が残り支払ってるのか?」
「そうかしら」
「ちょっとその辺り聞いてみるか」
 こう言うのだった。
「ここは」
「そうね」
 妻もそれはと頷いた。
「お義兄さんのお仕事のこともね」
「家事とかもしてくれてるけれどな」
「一緒にね」
「気になるしな」
「聞いてみましょう」
 夫婦で話して実際にだ。
 彼等は夕食の時に兄の文也眼鏡をかけてぼさぼさの黒髪で地味な感じの一七二位の中肉の彼に家賃のことを聞いた、すると。
「ああ、家賃多かったかな」
「多い?」
「といいますと」
「三万じゃね。二万にしようか」
「いや、三万でも少ないだろ」
 弟は兄に言った。
「ここに住むの考えたら」
「いや、家賃は全部俺が払えるから」
 兄は素っ気なく答えた。
「貯金もあるし」
「貯金もって」
「じゃあ二万にしようか」
「三万でいいよ、そういう問題じゃなくて」
 弟は食べつつ顔を顰めさせて言った。
「兄貴ここの家賃全部支払ってるんだ」
「そうだよ」
 兄はまた答えた。
「俺はね」
「どうして支払ってるんだよ」
「お仕事何ですか?」
 妹はこのことを尋ねた。
「一体」
「翻訳家だよ」 
「翻訳家さんですか」
「そうだよ、英語のね」 
 そちらのだというのだ。
「日本語を英語にして海外の仕事したりもね」
「されてるんですか」
「そうだよ、俺色々な英語わかるから」
「方言みたいな」
「コックニーとかもね」
 ロンドンのダウンタウンの方言である。
「わかるから」
「お仕事は多いですか」
「これでも売れっ子で」 
 それでというのだ。
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