第二章
[8]前話
「これで街の中なんてな」
「歩ける?」
「無理だよ」
小坂に苦い顔で言葉を返した。
「絶対にな」
「そこまでなんだ」
「足が悪いとこんなに大変なのか」
松本はこうも思って言った。
「傍目だと何でもないって思ってもな」
「実は違うんだ」
「全くな、こんなのやってられるか」
小坂はこうも言った。
「とてもな」
「そこまで言うんだ」
「お前も後でやるんだろ」
「次は僕だよ」
「そうしたらわかるからな」
小坂に言った、兎角今の彼は恐ろしいまでに大変だと思った。そして次は小坂だったが彼もそう言った。
この時から松本は車椅子の人を見るとこう言った。
「大変だな」
「そうだよね」
小坂も実感して言った。
「車椅子だとね」
「歩けるってそれだけでな」
「いいね」
「ああ、だからな」
それでと言うのだった。
「困っている人達はな」
「出来る限りのことをしないとね」
「駄目だな」
「そうだよね」
「身体の何処かが悪いと」
そうであるならというのだ。
「助けさせてもらわないとな」
「駄目だね」
「ああ」
小坂に心から頷いて応えた。
「俺達はな、それに俺達もな」
「僕達もだね」
「何かあったらな」
その時はというのだ。
「車椅子とか杖とかのお世話になるしな」
「杖も大変だよね」
「俺達今回はそっちは使ってないけれどな」
「それでもね」
「身体の何処かが悪いとそれだけで大変でな」
それでというのだ。
「何かあったらな」
「僕達も障害を持つね」
「そうなることはな」
「頭に入れておかないとね」
「いつもな」
こう話すのだった、そして実際に彼等は障害について真面目に考え動く様になった。もう何でもないと思うことはなくなっていた。
車椅子に乗らないとわからない 完
2023・11・18
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