第一章
[2]次話
車椅子に乗らないとわからない
下校中車椅子で移動している男の人を見てだった、小学五年生の松本淳史小さい頭でスポーツ刈りの元気そうな顔の彼は言った。
「いつも思うけれどな」
「どうしたの?」
一緒に下校しているクラスメイトの小坂明憲小柄で穏やかそうな顔で黒髪をショートにしている彼が応えた。
「一体」
「車椅子って大変って言うけれどな」
そう聞いているがとだ、松本は小坂に話した。
「そんなにな」
「大変か」
「皆すいすい動いてな」
車椅子を使ってというのだ。
「喋ってるしな」
「いや、大変だと思うよ」
小坂は懐疑的な様子の松本にこう返した。
「やっぱりね」
「そうか?」
「だって車椅子に乗ってるってことは」
このことから話すのだった。
「足が悪いってことだから」
「それはわかるけれどな」
「それでもなんだ」
「皆普通に動けてるからな」
その車椅子を使ってというのだ。
「だからな」
「そうなのかな」
「俺はそう思うけどな」
こんなことを言うのだった、だが。
ある日学校の道徳の授業で障碍者の人の状況を理解してどう接していくべきか考えようと先生が言ってだった。
実際に障碍者の人達の置かれている状況を理解する為にアイマスクをして杖を頼りに街を歩いたりした、そこで。
松本は車椅子に乗った、彼は最初いつも見ている様に楽に動けると思っていたが。
「な、何だこれ」
「どうしたの?」
「全然動かないんだよ」
サポートに回っている小坂に話した、次は彼が乗る番だ。
「車椅子ってな」
「そうなんだ」
「動かしにくいな、それに小石や段差があったらな」
歩いている時は全く気にならないそういったものが。
「凄く気になるな、周りにちょっとしたものがあってもな」
「大変かな」
「ああ、校庭でもな」
今はそこで乗っているが、だった。
「滅茶苦茶な」
「大変なんだ」
「ああ」
そうだというのだ。
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