第十九話 少年期A
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いがあるのならぶつけ合える。分かり合えるかもしれない。
なんか難しいし、混乱するけど、俺は魔導師なんだって胸を張れるようにはなりたいと思えたんだ。
「ただいま。母さん帰ってるー?」
「ただいま。先に見てくるよ。行こ、リニス」
アリシアは履いていた靴を脱ぎ、リビングへとパタパタと小走りで向かっていった。リニスも妹において行かれないようについていく。
2人の姿が見えなくなり、俺もいそいそと靴を脱ぐ。脱いだ靴を並べていると、母さんが履いていった靴が置いてあるのを見つけた。ということは、もう家に帰ってきていたってことか。
『今日はお疲れ様です、ますたー』
「あぁ。コーラルもありがと」
『いえいえ。それよりどうですか? 少しは魔法に興味を持っていただけましたか?』
声を弾ませながら聞いてくるコーラルに、俺は微妙に目をそらした。なんか認めたくないが、コーラルの最初の思惑通りに進んでしまった気がしないでもない。実際になんとなく使いたいという気持ちから変化はあった。たぶん悪くない方向に。
「……ちょっとはね」
『そうですか。それはよかったです!』
本当にうれしそうなコーラルに、まぁいいかと俺も笑みを浮かべた。玄関の靴を並び終え、屈みこんでいた身体を起こす。そこまで長くない廊下をコーラルと一緒に歩きながら、俺たちもリビングへと足を運んだ。
「とりあえず、魔法のことはもう少し後な。憂いごととか全部終わってからだ」
『そういえば、もう1ヵ月以上経ったのですね。向こうもそろそろ尻尾をつかんでいそうです』
「そうだな。たぶん近いうちに、きっと終わる」
俺は歩を緩めることなく、母さんとアリシアの待つリビングの扉を開ける。するとそこには、毛布が1人で歩いていた。文字通り、茶色の毛布がのそのそと動いている。俺と同じぐらいの膨らみとそれに続く小さな膨らみを見ながら、俺はコーラルに映像記録をお願いしていた。いやだって、なにこの面白い絵。
「何してんの。アリシア、リニス」
「あ、お兄ちゃん」
「みー」
俺の呼びかけに毛布から妹の顔と、鳴き声が出てくる。毛布に埋もれていたからか、アリシアの髪がところどころもさっとしていた。それにしても、毛布お化けごっこをするのならお兄ちゃんも誘いなさい。アクロバティックな毛布技を見せてやろう。
「その毛布、アリシアには大きすぎると思うぞ。もう少し小さい方が引きずらなくて済むのに」
「むー、でも。お母さんに合いそうなのがこれぐらいしかなかったもん」
「え、母さんの毛布お化け?」
「お化け!?」
いや、お化けになっているのアリシアだから。そんな毛布にくるまって怖がらなくても。妹が小さいころに、日本の奥ゆかしい怪談話をしたのがまずかったのか?
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