第3部
ジパング
扉の向こうの決戦
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の……」
だが、ユウリに促されてもヤヨイさんは、なかなか言い出せずにいる。かくいう私もじれったいと思いながら彼女の次の言葉を待っていた。
「あのっ!! ユウリさんは、恋人とかいるんですか!?」
「!?」
なっ!?
意を決して放った言葉は、予想外の内容だった。
もしかしたらと薄々感じてはいた。けど、今の質問で推測がほぼ確定に変わった。きっとヤヨイさんは、ユウリのことが……。
「……いや、別にいない」
ユウリのことだから、回りくどい言い方をするのかと思いきや、意外にも素直に返答した。
「じゃ、じゃあ、好きな人とかは……?」
ヤヨイさんの声が、こころなしか弾んでるように聞こえる。だが、彼女の踏み込んだ質問に、二人の間に十分すぎるくらいの沈黙が続いた。うう、流石にこの場にいる私も気まずい。
「……今はいない」
「!!」
『今は』? じゃあ、昔はいたんだろうか?
確かエジンベアで、ユウリは昔アリアハンの王女様に言い寄られていたとか言っていたが、もしかしてその人のことだろうか?
いや、イシスに寄ったときも女王様に好かれていたみたいだし、きっと今まで色々な女性と接していたのかもしれない。それに、ヘレン王女みたいな性格の人が苦手だと言っても、世の中そんな女性ばかりではない。だとすると、アリアハンにいる人か、もしくはこの旅で出会った人か……。
そこまで考えてはたと気づく。私ってばなんでユウリの女性事情にここまで深く考えているんだろう?
私は頭を振ると、再び二人の方に視線を向ける。先程のユウリの答えに、ヤヨイさんは落ち着いた様子で彼に向き直った。
「ユウリさん。私……、一目見たときからあなたのことが好きです。もし旅が終わったら、私と夫婦になってくれませんか?」
うわあああああっ!!??
思わず叫びそうになる口を、必死に両手で抑える。
生まれて初めて人が告白するところを見てしまい、なぜか第三者の私まで真っ赤になってしまう。
暗闇と遠目で二人の表情はわからないが、心なしかソワソワしているヤヨイさんに対し、当のユウリは平然としているように見えた。そして一呼吸の間を置いて、ユウリが放った答えは――。
「……悪いが、お前と夫婦になるつもりはない」
「……!」
はっきりとした口調で言われ、ヤヨイさんはあきらかに落胆した様子で肩を落とした。その姿に、なぜか私までモヤモヤしてしまう。
「そ……、そうですよね……。まだ私たち、出会ってそんなに経ってませんものね。でも、一緒に暮らすようになって、私のことをもっと知ってもらえば、もしかしたら……」
急に言い訳めいたことを言い出す彼女の言葉が段々と消え入りそうになり、再び沈黙が訪れる。
「……ごめんなさい、変なことを言って」
「悪いが、お前の気持ちには応えることが
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