1か月遅れの誕生日
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ルの中心に近い席へハルトを引っ張っていく。
「すみません。ハルトさん。しょうがないココアさんですから、付き合ってあげてください」
ココアの隣でそう言うのは、このラビットハウスの看板娘、香風智乃。
あまり気乗りしないようなことを口にしながらも、楽しんでいそうな表情からは、祝いたいという気持ちが表に出ているようにも見えた。
「改めて、ハルトさん、お誕生日おめでとうございます」
「嬉しいけど……」
ハルトはそう言いながら店内を見渡す。
すっかりハルトの誕生日パーティ一色に染まったラビットハウス店内。他の客にとって迷惑にならないかと考えたが、店内に自分たち以外の人影はなかった。
「これ……もしかして貸し切り?」
「今日はハルトさんの誕生日パーティだからね! たっくさんお祝いするためだよ! もちろん、チノちゃんのお父さんもオッケーしてくれたよ!」
ココアがそう言いながら、ハルトを真ん中の席へ案内する。背中を押す彼女は、元気に足を運びながら、椅子に座らせた。
ハルトが腰を落とすと同時に、ココアが椅子を押す。すぐにココアがその場から退く気配がすると、また別の人物がハルトの後ろに並んだ。
「お! おおっ! おおっ……」
それが誰か、と確認するよりも先に、ハルトの口から声が漏れ出る。
「ハルトさん、肩凝ってるね!」
背後からの声が指し示す通り、ハルトの肩が揉みしだかれていく。
「お、これ、は、友、奈、ちゃん……?」
笑顔でハルトの肩を揉んでいくのは、結城友奈。
可奈美の相棒として長らく聖杯戦争を戦い続けている彼女は、鍛えた腕でハルトの肩甲骨周りの筋肉を柔らかくしていく。回数が重なっていく毎に、ハルトの顔がだんだんと和らげていく。
「なんか、すっごい……友奈ちゃん、こう……おう、こういうの……慣れてる?」
「真司さんやおじいちゃんおばあちゃんにもやってるからね。これも勇者部活動の一つだよ!」
「なんだか、だんだん、体から、力が……」
へなへなになったハルトは、そのまま机に突っ伏す。
やり切った友奈がみんなの拍手を受けているのを背後で感じながら、ハルトは力なく起き上がった。
「友奈ちゃんすごいね。体が軽くなった感じがする」
「次はわたしだよッ!」
友奈に負けず劣らず、明るい声が続く。
立花響。
彼女は、厨房より出てきてハルトの前に皿を置く。
「ハルトさん、味があんまり分からないんでしょ? だから、美味しくて辛いものを一杯用意してきたよッ!」
彼女が言う通り、並べられたのはどれも赤々しい。
キムチや麻婆豆腐、辛そうなラーメンなど、見るだけで目が痛くなる食べ物が行列
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