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聖譚歌の奏者達
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知らないわよ」


ばっさり言い捨てるヴィレッタに苦笑し、2匹の狼に向き直る。


「セインとアルセは《ハティ》の方を抑えてくれ!」

「わかった!」

「任せて!」


少し離れた所にいる2人から気持ちのいい返事が帰ってきた。

武器を再び、大太刀に持ち帰ると、《スコル》に向かって疾駆する。


「グルオッ!!」


斜めに斬りつけた大太刀を僅かなステップでかわすと、反撃の体当たりをしてくる。


「………っ!」


巨体の下をくぐり抜けるように回避し、側面を取る。


「たぁ!!」


起き上がって反転する勢いのまま足を斬りつける。素早く反応した《スコル》は後退するように反転し、再び対峙する。

その時、《スコル》が、ぐっ、と前傾したと思ったときには、既に後ろに回り込まれた後だった。

背中に感じる圧迫感のみを頼りに横へ跳んだが、噛みついてきた牙がかすり、イエローだったHPがついにレッドになる。

他の2人も視界の端で確認すると、似たようなものだった。


「いいわよ、離脱しなさい!!」


3人が言葉と共に後退し、同時に2匹を中心に巨大な氷柱と火柱が突きだし、熱波と冷気が周囲に吹き荒れる。


「な……何あれ」

「初めて見る魔法ね?」


3人が合流し、杖に寄りかかって汗を流しているヴィレッタに声を掛ける。


「火属性と水属性それから風属性の系統を完全習得で出る《氷炎地獄(インフェルノ)》よ。全40ワード。使ったのは初めてね……」

「「「……………」」」


魔法の修練は過酷だと聞いたが、目の前の小さなメイジには埒外ののことのようだった。

疲労感はあるようだが、口調に『大したことじゃない』という感じがある。


「でもまあ、これで――――」


安心しかけたその刹那、巨大な2つの影がヴィレッタに向かって飛び出してきた。


「飛べぇぇぇぇぇぇっ!!」


叫ぶと同時に大太刀を抜き放ち、彼女と影の間に割って入る。間髪いれず、これまでにない衝撃。

防御をとっていなかったら確実に死んでいた。


「ぐ………っ!!」


庇ったはずの彼女も決して無傷ではない。硬直した彼女もまた後ろにいたハンニャが引っ張っていなかったらHPがレッドになっていただろう。

そして、セインとアルセは俺と同じく防御をとっていたお陰で事なきを得たようだ。

だが、


(……状況は依然として変わらんか)


確かに《スコル》と《ハティ》の3段のHPバーは最後の一本に突入している。前半に殆どダメージを与えていなかった事を加味すると、《氷炎地獄(インフェルノ)》は敵に十分に効いたことになる。

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