第一章
[2]次話
人相は生き方次第
ある年老いた尼僧を電車の中で見てだ、五歳になったばかりの坂口千佳子切れ長の長い睫毛の目と細い奇麗な眉にピンクの楚々とした唇を持つホームベース型の色白な顔で黒髪をおかっぱにした彼女は自分と同じ顔で一六五位の背で黒髪をロングにした胸の大きな母の芳江に言った。
「何かあのお坊さん気持ち悪い」
「あの人?」
「うん、何かね」
僧衣を着て座っているその尼僧を見て言うのだった。
「不思議と」
「そういえば」
芳江もその尼僧何も言わず座っている彼女を見て言った。
「そうね」
「何でかしら」
「人相がよくないのかしら」
頭は剃っていて小さな細い目だ、唇は薄く顔には皺がある。小柄でやや痩せている。
「そうなのかしら」
「人相?」
「お顔立ちよ、それでね」
人相と言われてもまだわからない娘に話した。
「表情というのかしらね」
「人相って」
「笑ったり泣いたりするわね」
母は娘に話した。
「それがそのままお顔にずっと出ているのがね」
「人相なのね」
「いつも笑っていたら」
それならというのだ。
「笑った人相になるの」
「そうなの」
「それで怒ってばかりだと」
「怒った人相になるの」
「いいことばかり考えていたらいい人相になって」
娘にこうも話した。
「悪いことばかり考えていたら」
「悪い人相になるの」
「だから千佳子ちゃんもね」
娘に優しく話した。
「いいことを考えてね」
「そうしたらいい人相になるのね」
「そうよ」
こうした話を電車の中でした、この時はそれで終わりだったが。
千佳子は大学生になってテレビを観て驚きの声をあげた。
「この人確か」
「どうしたの?」
「子供の頃電車の中で見た尼さんよ」
一緒にいた母にテレビに映っているその尼僧を指差して言った。
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