第二章
[8]前話
「猫が出てるだろ」
「犬に猫か」
「ふわりは犬でな」
それでというのだ。
「猫見たら鳴くな」
「挨拶みたいにな」
「吠えなくてもな」
「ふわりは吠える娘じゃないしな」
「けれど挨拶みたいにな」
そうした感じでというのだ。
「鳴くな」
「それでテレビに猫出てもか」
「そうしてもな」
今の様にというのだ。
「鳴くんだよ」
「そうしてるんだな」
「そうだ、そうしたこともな」
「わかることか」
「喋れなくてもな」
ふわりがというのだ。
「それでもな」
「家族だな」
「いつも言ってるな」
父は息子に話した。
「ふわりも家族だからな」
「人間と犬の違いはあってもな」
「ちゃんとわかることだ」
「何を言いたいのか考えているのか」
「そうだ、だからな」
「尻尾とか表情とか目をか」
「見て鳴き声でもある程度でもな」
それでもというのだ。
「わかることだ、今はな」
「テレビに猫が出てか」
「挨拶してるんだ、ふわりは怒ったりしないな」
「そうした娘だな、ふわりは」
「大人しくて優しくてな」
「誰とでも仲良くしようとするな」
「そうした娘だからな」
それ故にというのだ。
「猫にも攻撃的じゃないだろ」
「むしろ親しくしようとする猫に自分から寄ってくな」
「だから今はな」
「挨拶で鳴いたんだな」
「それだけだ、そうしたこともな」
「わかることだな」
「そうしたことも大事なんだよ」
こう言うのだった、そうしてだった。
二人でふわりに暖かい笑顔を向けた、するとふわりは今度は彼等に顔を向けて座ったまま尻尾を振ってワンと明るい声で鳴いた、その目はきらきらとしていてそこからも今の彼女の感情が出ていた。
喋れなくてもわかる 完
2023・10・24
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