第二章
[8]前話
「あの人のことは」
「いつもテレビに出て皆知ってる人だけれどね」
「それで名前にコンプレックス持っていても」
「そうするしかないわ」
「そうなのね」
「あんたには悪いけれど」
「どうしようもないのね、名前にコンプレックスあっても」
有名なそれも話題をいつも提供する女優と名前の呼び方が同じで何かと言われコンプレックスになっていてもとだ、梨恵は溜息を交えて言った。
そうして高校時代を過ごし就職もしたが。
二十を過ぎると然程言われなくなり結婚して名字が夫のものである前田になるとだった。
全く言われなくなった、それで母に実家に夫を連れて里帰りした時に話した。
「高校の頃まであの人と同じ名前ってね」
「いつも言われてよね」
「困ってたけれど」
「コンプレックスにもなって」
「あの人みたいに顔奇麗でもないしスタイルもよくないし」
「女優さんでもないから」
「だからね、それであの人が話題提供する度に」
その都度というのだ。
「あんたはしないのとか言われて」
「困ってたわね」
「けれどあの人が落ち着いた活動になって」
「人気はあってもね」
「色々あってね」
そのうえでというのだ。
「そうなってからは」
「言われなくなったわね」
「あまりね、そして結婚して名字が変わったら」
どうなればというのだ。
「もうね」
「言われなくなったのね」
「そうなったわ」
実際にというのだ。
「有り難いことに、あの時のコンプレックスは」
「名前のそれは」
「ないわ、コンプレックスもなくなるのね」
「そうね、名前でも」
一見どうしようもない消せないコンプレックスと思ってもというのだ。
「なくなるわね」
「そうね、しかしあの人今も活動してるけれど」
「人気はそのままね」
「相変わらず奇麗で演技も上手で」
それでとだ、その女優のことも話した。
「嬉しいわ」
「色々あったけれど頑張ってるわね」
「大河ドラマにも出てるし」
「これからも頑張って欲しいわね」
「あの人は嫌いじゃないのね、あんたも」
「奇麗で演技もいいし実は性格もいいみたいだし」
梨恵は母に微笑んで話した。
「あの人はね」
「コンプレックスの原因でも」
「あの人は嫌いじゃないわ」
「そのこともコンプレックスでなくなった理由かもしれないわね」
「そうね」
母の言葉ににこりと笑って応えた、そして自分と夫のことを話した。すると母も自分と夫のことを母娘で笑顔で話した。そこにコンプレックスはなかった。
昔はコンプレックスだった 完
2023・10・22
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