第一章
[2]次話
昔はコンプレックスだった
高校生の宮澤梨恵はその名前からだ。
「いつもあの女優さんだって言われて」
「嫌なのね」
「改名したいわ」
こう母に言った、黒髪を短くしていて色白で丸い顔で背は高い、大きな丸い目で唇は赤く耳は大きい。小柄でスタイルはかなりいい。
「本当にね」
「けれど名前はそうした理由ではね」
母の郁恵は困った顔で返した、母娘で外見はそっくりである。
「ちょっとね」
「出来ないの」
「ええ、女優さんと同じ名前って」
「よくからかわれてね、コンプレックスかっていうと」
「そうなるのね」
「からかわれて笑われて」
そしてというのだ。
「あの人と比べられるから」
「あの人が出てから」
「同じ様な年齢でしょ、だから小学生からね」
この頃からというのだ。
「あの人が人気が出て」
「テレビにいつも出て」
「色々話題になる様になって」
「話題尽きない人だしね」
「困ってるの、何とかならないかしら」
「気にしない様にするしかないわね」
母は困った顔で言った。
「お父さんもお母さんもまさかね」
「あの人が出て来るとは思わなかったわね」
「あんたが生まれた頃はね」
とてもというのだ。
「漢字は違っても」
「読み方が同じの名前って」
「そうはね」
「思いもしなくて」
「お父さんもお母さんもまさかって思ってるのよ」
「そうなのね」
「ええ、本当にね」
娘に申し訳なさそうに話した。
「お父さんもお母さんもね」
「どうしたものか」
「やっぱり気にしない様にするしかないかしら」
梨恵は困った顔で言った。
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