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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ジパング
ヒミコの屋敷
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「ほう。そちがヤヨイの代わりに自らオロチの生け贄になると申してきた娘か」
 村の中央にある広大な敷地に建てられた屋敷を訪れた私とユウリは、その中でも最も広い一室に通された。
 どうやってここに来たのかと言うと、ユウリの付き添い、という体でユウリとともにやって来た私は、まずこの建物の入り口にいた衛兵らしき人に経緯を話した。(世間的には亡くなったとされる)ヤヨイさんの代わりに、ユウリが自ら生け贄になると希望したのでヒミコ様に会わせていただきたい、と言う旨を伝えると、それを聞いた衛兵はすぐにヒミコ様に取り次いでくれて、さほど時間もかからずヒミコ様に会うことが許されたのだ。
 案内された部屋の入口では、侍女らしき人が私たちを出迎えてくれた。勧められるままに中へ入ると、そこは板張りの床と木製の壁が剥き出しのまま張り巡らされている部屋だった。柱や壁には要所要所に精巧に作られたレリーフや模様が直接彫られている。壁紙などもない独特の造りではあるが、全て木でできているという統一感は、素朴さよりもかえって芸術的にも見える。とはいえ木に包まれた空間は、室内にいるとは思えないくらいの自然な温もりを感じられた。
 などと初めて見る作りの部屋に感動していると、先程の侍女が「ヒミコ様の御前です。そこで座ってお待ち下さい」と言ったので、床に座ることに少し驚いたが、ヒイラギさんたちにこの国のマナーはある程度聞いている。言われたとおり、座ることにした。
 しばらくして、女性にしてはやや低い声が静謐な室内に響き渡った。これが冒頭の出来事である。
 いつの間にヒミコ様が部屋に来たのか、私は思わず周囲を見回す。けれど目の前には細い木の枝を束ねて作られた壁のようなものがあるだけで誰もいなかった。
 すると、いきなりユウリが肩を掴んで引き止めた。そして耳元まで顔を近づけると、誰にも聞こえないほどの小声で言った。
「あまりキョロキョロするな。それにあれは壁じゃない。うっすら人影が見えるだろ。あの向こうに人がいる」
「えっ!? じゃ、じゃあまさか……」
「ああ。おそらくあの人影が、ヒミコとか言う奴だろ」
 すると、パンパンと手を叩く音が聞こえてくるとともに、入口の脇にいた侍女がゆっくりと近くにある一本のロープをひっぱった。するとそれに連動して、目の前の壁がカーテンのようにするすると上に開いていった。驚きつつもそれを眺めていると、壁の向こうから一人の女性が現れた。
 肩でまっすぐに切り揃えられた黒髪を揺らしたその女性は、イシスの女王ほどではないが目鼻立ちの整った美人だった。しかしややつり目がちな目と細い眉は、人によっては近寄りがたい印象を受ける。何より彼女が醸し出す雰囲気が、何か得体のしれない不思議な力を持っているように感じた。
 それきり沈黙が続くと、こちらから名乗らなければいけな
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