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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ジパング
ヒミコの屋敷
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後に話がしたいので、しばらく二人きりにさせていただいてもいいですか?」
 表情を悟られないよう俯きながらそう懇願すると、侍女はそれを別れを惜しんでいるのだと思ったのか、一言「わかりました」と哀れむように答えた。
 侍女が去っていく足音が完全に消えたのを確認すると、私はふうと息を吐いた。
「問題はここからだな」
 ユウリの言うとおり、どこに通じているかわからない旅の扉の中に入ってしまえば、もうここへは帰ってこられない。
「仕方ない。手っ取り早く爆破させるか」
「へ!?」
 すると私が理解するより早く、ユウリは部屋の壁に向かって手をかざし、精神を集中させた。
「イオラ!!」
 ドガアアァァン!!
 途端、鼓膜が破れるくらいの凄まじい爆発音が部屋中に響き渡った。
 そしてユウリが手をかざした方の壁が破壊され、人一人通れるほどの大きさの穴が見事に空いた。
「もうっ、ユウリちゃんてば雑すぎ!! 近くにあたしたちがいるってこと忘れてない?」
 穴の中からひょっこりと現れたのは、シーラだった。彼女の後に続いてナギも同じ穴から部屋へと入る。
「お前ら一体何やってたんだよ、こっちは待ちくたびれてんだぜ!」
「いやだって、まさかお風呂まで入るとは思わないじゃん!!」
 待ちくたびれてすっかり不機嫌になってるナギに反論する私。
 そう、今まで二人は私たちのすぐ近くにいたのだ。と言っても屋敷の外で人目につかないところに隠れていたのだけれど。
 だがなぜ私たちのいる場所がすぐにわかったのかと言うと、昨日シーラが言っていた、結界の感知を応用した賢者特有の特技を使ったのだ。
 結界を感知すると言うことは、結界を張った術者の魔力を感知できると言うこと。つまりある程度魔力を持った人間――ここで言うならユウリのことだ――なら、正確な居場所を把握することができるのだ。
 シーラがこの技を習得していなければ、これほどまでに早く合流することはできなかっただろう。
「騒ぎになる前にあの旅の扉に入るぞ」
 ユウリの声が言い終わらぬうちに、外からバタバタとこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。おそらく先程の侍女が駆けつけてくる音だろう。彼女がやってくる前に、一足先にユウリが旅の扉に飛び込む。続いてナギ、シーラと続き、最後に私が飛び込むことに。
 バァン!!
「一体何事ですか!?」
 勢いよく開かれた扉の向こうには、騒ぎに気づいてやってきた侍女の姿。けれど間一髪、彼女がその部屋を訪れたときには、私たちはもう別の場所へと移動していたのであった。


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