第3部
ジパング
ヒミコの屋敷
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私は誰もいないか確認し、すぐに扉を開ける。
すると開けた瞬間、まるで森林の中にいるみたいな、爽やかな香りが広がった。そしてそれがお風呂上がりのユウリから発せられていることに気づく。
「何かいい香りだね」
お風呂に入っても化粧を上手く残して出てきたユウリは、指摘されるまで気づかなかったのか自らの匂いを嗅いだ。
「香油を入れたわけでもないみたいだが、一つ気になるところといえば、ここの湯船は木で出来ていた。おそらくそれのせいだろう」
今までの旅で立ち寄った国には、湯船に香りをつける宿屋もあった。けれどこの国のお風呂は他国とは違う独自の文化があるようだ。
お清めも終わり、ヒミコ様のいる部屋に再びやって来たが、部屋には誰もいなかった。もちろんカーテンの向こう側にもいないし、ここに来る途中で見かけてもいない。どうしようかと手持ち無沙汰になっていると、
「ここにいらっしゃったんですね。ヒミコ様は今ご祈祷をされているので私が案内をします」
声をかけてきたのは先ほどの侍女だった。どうやら私たちを探していたらしい。
「ご祈祷って?」
「ユウナ様の魂が無事に天へと召されますよう、ヒミコ様御自らお祈りをしているのです」
彼女の話だと、どうやら生け贄を捧げる度に祈祷部屋と呼ばれる部屋でそう言った儀式を執り行っているらしい。そこはヒミコ様しか出入りすることを許されず、生け贄の娘がオロチの元へと向かうまでずっとそこでお祈りを続けているそうだ。
そんなことをして本当に効果があるのかわからないが、この国の人たちはヒミコ様のお祈りによって、生け贄の娘が亡くなっても魂は救われるのだということを信じているのだろう。
「では、ユウナ様、ついてきてください。ミヤ様はどうされますか?」
「私も同行させていただいてもよろしいですか? 姉の最期の姿を見届けたいのです」
そう言うと私は悲しみをこらえるかのように目を伏せる……ふりをした。なんだかどんどん嘘をつくのに慣れてしまっている自分が怖い。
「わかりました。では、こちらへ」
すると侍女は屋敷の入り口とは反対方向に向かって歩きだした。不思議に思いながらも私たちは後へと続く。
広い廊下を歩いていくと、やがて奥に一枚の扉が見えてきた。侍女がゆっくりと扉を開けると、そこは小さな部屋だった。
明かり取りの窓すらない薄暗い部屋の中央には、見覚えのある物体がある。
「これって……!?」
「これはヒミコ様の神通力によって生み出された、オロチへと続く道です。この中に入ってください」
この中とは、今までの旅で何度も目にしている、旅の扉だ。青白い光を放ちながら、不規則に渦を巻いている。
「この中に入ったら最後、二度とここに戻ることは出来ません。ミヤ様はどうされますか?」
「す……すいません。姉とどうしても最
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