第3部
ジパング
ヒミコの屋敷
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いのだと気づき、慌てて自己紹介をする。
「はっ、初めまして、私はミヤと言います! 隣にいるのが姉のユウナです! ヒミコ様、この度はお目通りさせていただき、ありがとうございます!」
「ふむ、そう固くならずとも良い。そなたたちのような健気な娘、わらわは嫌いではないぞ」
一応偽名を使って自己紹介をしたが、とりあえず好印象を持たせることはできたようだ。
「もう一度聞くが、そこの娘がヤヨイの代わりにオロチの生け贄となると申しておるのか?」
「は、はい、そうです! 姉は生まれつき口が聞けず、このような容貌ながら未だに嫁ぎ先が決まらず、家族に引け目を感じておりまして……。だったら何かできることはないかと家族で話し合った結果、村の存続のために自らの身をオロチに捧げようと参った次第でございましゅ」
ヒイラギさんの家であらかじめ皆で考えておいた台詞を思い出しながら喋っていたら、最後の最後で噛んでしまった。
「いっ?!」
案の定、ユウリに後ろから背中をつねられ、思わず小さな悲鳴を上げる私。横を見ると胡乱な目で睨むユウリの姿があった。
けれどヒミコ様は気づいていないのか、まるで品定めでもするかのように目を細めながら、真っ赤な唇を弓なりにした。
「そうか、それは民思いの娘じゃの。近頃、生け贄になる者がめっきり減っておってな。次の生け贄をどうするか悩んでおったのじゃ。おぬしのような娘が現れるのはとても喜ばしいことであるぞ」
ヒミコ様と視線が合ったユウリは、無言でこくりと頷く。
傍から見たら、これから生け贄としてオロチの前に差し出される薄幸の美少女にしか見えないだろう。だが実際は、シーラに無理やり女装をさせられ不機嫌なだけであり、無言なのも声を出すと男なのがばれてしまうからに他ならない。
だがそんな事情など全く知らないヒミコ様は、ユウリを完全に生け贄を志願してきた女の子だと思い込んでいる。
すると今度は私の方に顔を向け、興味深げに笑みを浮かべた。
「ところで……、おぬしもなかなかオロチの好みに相応しい娘だのう。生け贄の数は多い方が良い。もしその気があれば……」
ヒミコ様の言葉を遮るように、隣にいたユウリが私をかばうように前に出る。無言でヒミコ様を睨みつけるユウリに、彼の正体がバレやしないかとヒヤヒヤしたが、それと同時に自分にも生け贄にならないかと言われたことに若干の恐怖を覚えた。
「あ、あの、私は姉の付き添いで来ただけですので……」
「そうか……。それは仕方ないのう……」
その言葉以上に落胆するヒミコ様。なぜそこまで生け贄の数を増やすことを求めているのか。何となく私は違和感を覚えるが、それよりも今はこの場をなんとか乗り切り、オロチのいる場所を突き止めるのが最優先だ。
「あの、それで姉はいつオロチの元へ連れていかれるのですか?」
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