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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第93話 カプチェランカ星系会戦 その4
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 一方で他の部隊の状況も芳しくはない。

 第三五三独立機動部隊と第四一二広域巡察部隊は、それぞれ残存艦は五〇隻に満たないほどに打ち減らされた。第三五三独立機動部隊旗艦である戦艦バラガートの撃沈は確認され、司令のドゥルーブ=シン准将の戦死は確認された。第四一二広域巡察部隊司令のピラット=パーイアン准将は命こそ失わずに済んだが、旗艦に直撃弾を受け、司令艦橋ががれきの山となり、出血多量の重体で戦闘指揮を執ることは到底不可能な状況。結局両部隊は統合し、一個戦隊として再編し第八艦隊に編入される。
 第三五九独立機動部隊と第三六一独立機動部隊はそれぞれ三割ほどの損害を出しているが、パストーレもムーアもそれぞれ健在で、一応の組織戦闘能力を有している。ドゥルーブ=シン准将が戦死したことにより、右翼部隊の最先任指揮官がパストーレになったのは皮肉な結果だ。
 第八艦隊は残存艦艇が一〇三〇八隻、損失率は一七.一パーセントと比較すれば一番損失率が少ない。だが母数が大きいとはいえ二一二五隻もの艦艇を完全喪失しているのだから、手放しで喜べるはずもない。
 ハイネセンを出動した時点からの艦隊戦における損失率は、地上戦部隊の艦艇も含めた総体として二三.七パーセント。現時点での戦死者数は三六万人に達する。

 一方で各部隊より集積された戦闘詳報の集計も第八艦隊司令部では終了したようで、速報値とはいえ敵艦隊の損失は七〇〇〇隻をゆうに超え、総体としての損失率は三五パーセントに達するだろうという事だった。単純に報告に上がった数字を積み上げただけでなく、戦闘終了後の重力波観測などを含めたものであるので、話半分と言った誤差はないと思われる。

 全体から見ればカプチェランカ星系会戦は同盟軍の勝利で終わったと言っていい。推定される帝国軍の残存艦艇数は、同盟軍の残存艦艇数とそれほどの差異はない。帝国軍はイゼルローン要塞駐留艦隊を動員しており、これ以上の損害を被ればイゼルローン要塞自体の防衛に障害が出るので再び戦うというのは戦略的には無意味だ。恐らくは遠巻きに同盟軍と包囲されたカプチェランカを眺めつつ、同盟軍の援軍を確認した後、イゼルローン要塞へと撤退することだろう。

 艦隊戦だけで両軍合わせて一万隻以上。推定で一〇〇万人の命が失われた。地上軍でもそれなりに損害が出ているはずで、これから戦死者数はもっと増えることだろう。まったくもってうれしくない未来だ。

「第一〇艦隊の星系到着は、早くても五日だな」

 全艦隊が隊列を整え、惑星カプチェランカへと針路をとった中、モンティージャ中佐はスパルタニアン搭乗員用と同じロイヤルゼリーと小麦蛋白の混合チューブを口にしながら話しかけてきた。胃に優しく疲労回復にも実に効率のいい食品としていろいろなフレーバーで民生品も販売されているのだ
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