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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第93話 カプチェランカ星系会戦 その4
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・ヨー・ヨーのような軌道で帝国軍中央部隊の『下腹部』に噛みつきに行く。爺様の言い方ならば「左サイドボディから左ローキック」というところか。

 これで帝国軍中央部隊は、正面から第八艦隊主力から圧を受け、右側面より第四四高速機動集団に抉り込まれ、右後方を下から第八艦隊第四部隊に刺される形になった。もはや中央部隊の右翼集団は組織的な抵抗をできる状態になく、旗艦集団と思しき部隊は右舷回頭しつつ後進を開始している。左翼集団も回頭して第八艦隊との距離を取り始めている。第四部隊の離脱当初は錯綜していた味方の通信回路も、現状追認といった形で落ち着きを取り戻している。

 ただし帝国軍でもメルカッツ艦隊だけが元気に前線で戦っている。第三五三独立機動部隊と第四一二広域巡察部隊が居た宙域から前進し、第八艦隊本隊と第三五九・第三六一両独立機動部隊との間に完全に割り込んでいる。そのまま直進ののち右旋回すれば第八艦隊の後衛や支援部隊を攻撃範囲に収めることができるだろうが……

「まぁ、左旋回するじゃろうな」

 爺様のぼやきの通り、メルカッツ艦隊は左旋回し、帝国軍別動隊と対峙している第三五九・第三六一両独立機動部隊と第八艦隊第五部隊の後方を掠めるように突き進んでいく。同盟軍の右翼集団を孤立させるように見せて、主力である第八艦隊の注意を引きつつ、分散して撤退を試みるということだろう。
仮にメルカッツが目先の功績を狙って第八艦隊の後方を襲ったとしても、帝国軍中央部隊を第四四高速機動集団と第八艦隊第四部隊に任せた第八艦隊主力が両端部より順次回頭し、半包囲することもできる。同盟軍右翼集団も呼応すれば半包囲どころか三/四包囲になる。

「敵艦隊は撤退戦に移りつつあります」

 二月二八日 一〇〇〇時。モンシャルマン参謀長が言う通り、帝国軍は大きく三つに部隊を分けて戦域を離脱しつつある。帝国軍中央部隊は輸送艦も工作艦もいない状況下で継続戦闘能力を失い後衛部隊から順次回頭、メルカッツ艦隊は同盟軍から見て右後背四時三〇分の方角へ直進、第八艦隊第五部隊と対峙していた帝国軍別動隊もそれに続く。

 第四四高速機動集団に最初に撃破されたヴァルテンベルク艦隊の残存部隊は、早々に戦域を離脱した。これは戦域離脱を許可したはずの第八七〇九哨戒隊が案の定任務を続行しており、本隊が勝利に傾きつつあることを確認してから、随時その位置を連絡してきている。

 現戦域での勝利はほぼ確定。だが現時点での戦力はまだ五分と五分。戦闘が開始されてから三五時間。中途下火になった時間も含め、同盟軍全体としての陣形もかなり複雑になっており、次の戦闘に備える意味でも一度休息を入れるべき時だろう。

「第八艦隊司令部より入電。追撃中止。全艦隊集結・現宙域の残敵を掃討しつつ、陣形を整えよ、とのことです」

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