第93話 カプチェランカ星系会戦 その4
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隊司令部の構想が半包囲である以上、そんなことすれば明確な司令無視。まだ第四四高速機動集団は第八艦隊の麾下部隊ではないので色々言い訳ができるが、第四部隊はそうはいかない。失敗すれば指揮官は更迭間違いないだろう。
それを心得た上で、指揮官ではなく参謀長が秘匿通信を送ってきたということだ。しかも前哨戦において、こちらの行動に呼応するように動いてくれたことを貸しにして、言外に協力しろと言ってきた。第四四高速機動集団としては断ることは出来ない。仮に協力せず失敗した場合、秘匿通信を第八艦隊司令部に上げるぞという小さな脅迫を含めて。実に嫌らしい話だ。
「参謀長閣下」
「この件に関してはビュコック提督も私も、今の君には答えないよ。ただ、まぁ……君が艦隊司令官職に就いた時には、ある程度覚悟しておくことだね」
あのシトレに艦隊指揮官としての統率力がないというわけではない。だが戦理に適っていない命令が下った時に、麾下部隊が司令部に不満を抱き、勝手に動くような可能性は常にあるということなのか。到底認められないような話だが、爺様やモートンといった叩き上げの指揮官達にとっては、それが当然なのだろうか。あるいは同盟軍はそうやってエリートたちの墓穴を埋めてきたということなのだろうか……
余計な詮索はともかく、今は陣形再編が優先だろう。第四部隊が降下砲撃に出る以上、第八艦隊との間に火力の隙間ができてしまう。これを埋めるには陣形を右方向に広げて、隙間に向かえないようにすることだ。現在の円錐陣における底面を広げ、頂角を拡大しつつ、母線を底面中心からやや右方向に移動させる。火力の面積密度を減らさない為に、円錐の高さを小さく(扁平に)する必要もある。麾下部隊を移動させ、戦闘を継続しつつ。
制式艦隊ならば専門の運用士官がいるだろうし、そういう訓練もするかもしれない。だがようやくフォーメーション変更を滑らかにできるようになったばかりの、損害のある高速機動集団にはかなり難しい話だ。特に母線軸にあるべき旗艦が移動することになるから、計算の難易度はかなり高いものになる。
モンシャルマン参謀長の砲撃指示を翻訳する余裕は俺にはない。リアルタイムで支配宙域が変わる中、麾下各戦隊をどう配置し、その位置に向かってどう動かすか。ファイフェルが苦労しながら任務を肩代わりしてくれている間、運用シミュレーションをひたすら叩き続ける。ヤンがその艦隊指揮において一体どれだけ『ズル』をしているのか。
恨み言をこぼしながら格闘すること一五分。形になったシミュレーションを参謀長に提出し、爺様に手渡され、即座に承認されて、第四四高速機動集団はそれなりにスムーズに陣形の変更を行う。その動きを目ざとく察知した第四部隊は、第八艦隊の砲火戦列から離脱。一気に戦域水平面を前進降下し、まるでロー
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