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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十六話 陪臣達の宴
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自給自足の生存圏を持った国とそれ以外の国の対立、
混乱し、迷走し、そして大戦へと至り、人間は遂に人間を滅ぼす力を手に入れた。

「――楽園は永遠に存在しないからこそ楽園、か。」
「どうした?」

「いえ、どんな事にも終わりはある、と思っただけですよ。今までの平和にも、この無益な戦にも」

「どんな結末であれ――か。」
 富成は悲しげにこの闊達な喧騒を見た。
「負ける、と決まってはいないさ。」
供駒中佐が励ます。
「数だけが問題では無い。やりようはあるさ、俺達は若殿と共に〈皇国〉の為にあるのみだ。
俺達は〈皇国〉陸軍の将校なのだから。」
 鍬井大佐が明快極まりない結論を出す。
「俺は近衛だがね。陛下の宸襟を安んずる為にも、な。」
益満大佐もそう言って笑った。

「――まぁ、やれるだけやりましょう。悪戦が来るという現実は変わらないでしょうが気の持ちようで結構かわるもんですよ」
 ――此処に居る人達は旅団を率い、司令官を補佐する事は出来てもけして軍を率いる事は出来ない。戦場で万を超えた命を預かるのは五将家だ。有能であれ、無能であれ選択の余地は無い。――そうした世界なのだ、此処は。
口にした黒茶はやけに渋かった。
 ――今回ばかりは酒にすれば良かったな――

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