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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十六話 陪臣達の宴
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――時代は変わり、将家は消える、将家の将家たる故最後の拠り所を失う。
衆民の時代が来る、衆民の政府となり、衆民の軍となり、〈皇国〉は皇家を御輿にした衆民達の国になる。そして家名では無く、財貨で地位が決まり万民平等を嘯く国になるのだろう。
 ――それが良いことなのかは分らない。それはそうしたモノなのだ、と考えるしかないのだろう。
 朧気ながらも民主主義を奉じていた身であった筈だが、立場が変われば変わるものだ。と内心苦笑を浮かべた。
無論、体制だけで全てを論じる事はできない、経済・技術・教育等々の発達があってこそ、あの民主主義なのだから
「何をしている?豊坊。まだ歩けもしなかった頃の戦が懐かしいのか?」
そう言いながら豪快に笑う声には聞き覚えがあった。
「――お久しぶりです、益満大佐殿。御健勝そうで何よりです」
 そんな十余年も前の呼び方は止めてほしいのだが、と溜息をつきながら豊久は頭を下げる。
「ふん、馬堂中佐、か。気がついたら閣下とお呼びしなくてはならなそうですな」
 そういいながらバシバシと豊久の背中をどやすのは益満家の跡継である益満昌紀大佐の纏う軍服は豊久と同じ漆黒が基調であったが、豊久のそれの様に金糸によるものではなく、赤と白銀でより壮麗に飾りつけられている――近衛禁士隊の軍服である。彼は禁士隊司令部の首席幕僚であった。
「ははは、軍監本部に顔見せに行った時も言われましたよ。
まぁその分、色々と酷い目に遭いそうですがね」
「だが、冬まで生きていれば大佐だろう?父から聞いたが、若殿様も貴様の事を買っている様だな」

「こんな戦況では大佐の階級章をぶら下げる前に『閣下』に成りかねないのが恐ろしいとこですが。ま、帷幕院に行き損ねましたし家格を鑑みても、この戦の間は大佐でしょうね」
 ――そう若者がそうポンポン出世する程、上の席が空く様な戦況にならないで欲しいものだ。
と内心、豊久は呻いた。
――兵部省にとって涙すべき四十寸なぞ御免だ。
「確かに、貴様が経験不足なのは否めないがまぁ働き次第だろうよ。
だが確かにこれで貴様も一生分の栄達が約束されたようなものだろうな」
そう言い、顎を掻く。
「俺も遠からず、総軍司令部に転属だ。さすがに出征する際にはそちらに権限が集中されるからな。俺も禁士隊の中じゃそれなりに実戦派で通っているからな。前線に出張る事になる。――その前に馬鹿な騒ぎを片付けなくてはならないが」
うんざりした様に頭を振る。
「馬鹿な騒ぎ、ですか?」
「まぁ色々と、な。栗原閣下も家格だけの御方では無いのだが、五将家の横車には弱くてな。
面倒を背負い込む羽目になる。だから今日は貴様を肴に馬鹿騒ぎして憂さ晴らしだ」
そしてまた、呵呵と笑った。
「さぁ! 主賓の癖に皆を待たせるな!さっさと行くぞ!」
そう
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