第3部
ジパング
勇者☆ミラクルチェンジ
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と思いきや、どうやらアルヴィスにとっては不完全燃焼だったらしい。
そこでシーラと再びアッサラームに行った際、アルヴィスから自身の化粧道具を託された。それは、アルヴィスの意志を継ぐ行為でもあった。
その約束をきっちり覚えていたシーラはあろうことか、このタイミングでユウリにそれを行ったのだった。
それもただ化粧を施しただけではない。かつらやつけまつげなども用意されていたのか、シーラはアルヴィスから受け継いだであろう技術をこれでもかというほどユウリに詰め込んだのだ。
……なんだかもっともらしく説明しているが、結局ユウリに化粧をしたいというシーラとアルヴィスの個人的な願望なのである。
ともあれ今のユウリは剣を持った勇者ではない。少しでも触れてしまえば壊れてしまいそうなほど儚く、それでいて完璧な美貌の娘と変貌していた。
ちなみに今の姿を見てからずっと、彼は一言も話していない。精巧な人形のように表情を変えないユウリであるが、おそらく化粧の下は不機嫌マックスの状態だろう。その証拠に、さっきから私やナギを見る目が殺気立っている。
「も、もしかしてユウリさん!?」
ヒイラギさんも、今頃ユウリに気づいたようで、腰が抜けそうになっている。
「ぎゃははははは!! やべえ!! 過去イチやべえ!! 最高かよ!!」
いやいやナギ、そんな態度とったらあとでユウリに何されるかわかんないよ?
流石に村人たちがいる前では呪文を唱えたりはしないようだが、彼の利き手である左手を見ると、握りしめた拳を小刻みに震わせている。
「これでヤヨちゃんが持ってる生け贄用の服を着せれば、立派なオロチの生け贄が完成するよ☆」
女装した勇者をオロチの生け贄にするという発想はなかなか出ない。というかシーラだからこそ発案できた内容だろう。
「けどよ、ここに来るまでに随分大騒ぎになってんじゃねーか?」
「大騒ぎになればヒミコ様に気づいてもらえるからいいんだよ♪ オロチって、若くて美しい女の子が大好物なんでしょ? ユウリちゃんならきっとヒミコ様のお眼鏡に叶うと思うよ☆」
「お前が言うと語弊があるな……。まあ確かにヒイラギさんもそう言ってたけどさ。そもそもこの女装勇者に清らかさなんてあるのか?」
「大丈ー夫!! この姿ならいくらお金にがめついユウリちゃんでも、誰もが認める純真無垢な美少女にしか見えないって!」
その言葉に、ユウリは今にも呪文を唱えそうな勢いでなにやらぶつぶつと呟いている。
「じゃ、じゃあヤヨイさんの服を借りたら早速作戦会議しよう!」
怒りが頂点に達しようとしているユウリの機嫌を少しでも紛らわすため、私は空元気で声を張り上げたのだった。
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