第130話『なりたい自分』
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あちょっと待っててくださいねっと」
ざっと経緯を説明すると、終夜は納得して魔力測定器の準備に取り掛かる。後学のために横から覗いて見たが、何をしてるのかはさっぱりわからなかった。
「よし、それじゃあここに手をかざして」
いつものように指示を出す終夜。
今から未知の出来事が起こるのだと、狐太郎はゴクリと喉を鳴らしてから恐る恐る手を出した。
終夜は狐太郎に目を瞑って集中するように指示を出し、魔力測定器を動かす。すると中央の水晶が光り、その周りの輪っかが回転を始める。
──時間にして約20秒。駆動を終えた測定器から何やら紙切れのようなものが出てくる。恐らく、あれに能力について記述されているはずだが、果たして。
「"妖狐"、レベル2か。うん、その狐みたいな耳と尻尾は確かに魔術のせいだ」
終夜は淡々と伝えたが、その報告は柊一家と晴登にとって待ちわびていたものだった。
狐太郎の両親は手を取り合って喜び、一方狐太郎は反応に困った様子だ。
そんな彼らに、終夜は問いかける。
「それで、これからどうするんですか?」
「魔術を使えるようになれば、この耳と尻尾を引っ込めることができるようになるんですよね? だったら魔術の扱い方を教えていただければ……」
「なら、話は早いですね。魔術部に入部しましょう。それしかありません」
最初から答えがわかっていた質問なので、営業トークのように早口でまくし立てる終夜。引退してもなお、部員が欲しいことに変わりはないらしい。
「……本当に大丈夫なんでしょうか?」
「もちろんです。俺はもう引退しましたが、今はこいつが頼もしい部長としてやってくれています」
終夜の様子に狐太郎の父親が疑念を持つが、現部長が晴登と知ると、快く首肯した。
「だったら──いや、こういうのは本人が決めないと意味ないですよね。狐太郎、お前はどうしたい?」
だが、それを親が決めたから決まりという訳ではない。決めるのは当事者である狐太郎なのだから。
みんなの視線が狐太郎に集まる。彼はまだ状況についていけてなかったが、これだけは言わなくちゃいけないと口を開いた。
「お父さん、お母さん、ごめんなさい。疑ってたのは僕の方だった。ずっと逃げられたって、捨てられたって思って……でも違ったんだ。僕は独りじゃなかった。家族も、友達も、みんな僕を助けようとしてくれていたんだ」
己の過去を悔い、両親に謝罪する狐太郎。だが誰も彼を責めることはできない。彼は言わば運命の被害者なのだから。
「この耳と尻尾が憎い。治せるなら今すぐ治したい。……でも、一つだけ気になってることがあるんだ」
「何?」
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