暁 〜小説投稿サイト〜
非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第130話『なりたい自分』
[8/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
あちょっと待っててくださいねっと」


ざっと経緯を説明すると、終夜は納得して魔力測定器の準備に取り掛かる。後学のために横から覗いて見たが、何をしてるのかはさっぱりわからなかった。


「よし、それじゃあここに手をかざして」


いつものように指示を出す終夜。
今から未知の出来事が起こるのだと、狐太郎はゴクリと喉を鳴らしてから恐る恐る手を出した。

終夜は狐太郎に目を瞑って集中するように指示を出し、魔力測定器を動かす。すると中央の水晶が光り、その周りの輪っかが回転を始める。

──時間にして約20秒。駆動を終えた測定器から何やら紙切れのようなものが出てくる。恐らく、あれに能力(アビリティ)について記述されているはずだが、果たして。


「"妖狐(ようこ)"、レベル2か。うん、その狐みたいな耳と尻尾は確かに魔術のせいだ」


終夜は淡々と伝えたが、その報告は柊一家と晴登にとって待ちわびていたものだった。
狐太郎の両親は手を取り合って喜び、一方狐太郎は反応に困った様子だ。

そんな彼らに、終夜は問いかける。


「それで、これからどうするんですか?」

「魔術を使えるようになれば、この耳と尻尾を引っ込めることができるようになるんですよね? だったら魔術の扱い方を教えていただければ……」

「なら、話は早いですね。魔術部に入部しましょう。それしかありません」


最初から答えがわかっていた質問なので、営業トークのように早口でまくし立てる終夜。引退してもなお、部員が欲しいことに変わりはないらしい。


「……本当に大丈夫なんでしょうか?」

「もちろんです。俺はもう引退しましたが、今はこいつが頼もしい部長としてやってくれています」


終夜の様子に狐太郎の父親が疑念を持つが、現部長が晴登と知ると、快く首肯した。


「だったら──いや、こういうのは本人が決めないと意味ないですよね。狐太郎、お前はどうしたい?」


だが、それを親が決めたから決まりという訳ではない。決めるのは当事者である狐太郎なのだから。

みんなの視線が狐太郎に集まる。彼はまだ状況についていけてなかったが、これだけは言わなくちゃいけないと口を開いた。


「お父さん、お母さん、ごめんなさい。疑ってたのは僕の方だった。ずっと逃げられたって、捨てられたって思って……でも違ったんだ。僕は独りじゃなかった。家族も、友達も、みんな僕を助けようとしてくれていたんだ」


己の過去を悔い、両親に謝罪する狐太郎。だが誰も彼を責めることはできない。彼は言わば運命の被害者なのだから。


「この耳と尻尾が憎い。治せるなら今すぐ治したい。……でも、一つだけ気になってることがあるんだ」

「何?」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ