第130話『なりたい自分』
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だよね、三浦君?」
狐太郎は晴登たち魔術部がいつも使う誤魔化しの文句を信じてくれている。いや、そもそも魔術の存在を信じていないからこそか。
彼の言葉に頷けば、晴登はこれからもマジックが得意な一般人であり続けることができる。
──だが、本当にそれでいいのか。
彼らは魔術という未知の分野を知り、その専門家に助けを求めている。ここで晴登が逃げるということは彼らを、ひいては狐太郎を見捨てることに他ならない。なら、答えは一つだ。
「ごめん、狐太郎君。その話は嘘なんだ。──魔術部は、名前の通り魔術を研究する部活です」
晴登の真剣な表情を見て、嘘をついていないことはすぐにわかってくれたようだ。2人の顔に希望の色が見え始める。
ここからの話は実物を見せながらの方が話が早いだろう。
「場所を変えましょうか」
*
「ここが、魔術部の部室です」
屋上から場所を移動して、魔術室にやって来た。文化祭中とはいえ、この教室を使うような物好きはいないので、周りに人は少なく、内緒話をするにはもってこいの場所だ。
「見たことない道具がたくさん……!」
「それは前部長が置いていったやつですね。俺もよくわかりません」
教室の中を見渡して、狐太郎は無造作に置かれている魔道具に反応した。これらはほとんど終夜が作ったものであり、魔法陣の描かれた布やいつぞやの拘束テープ、変な形の剣やマジックアームのような何かと、晴登にすら使い方のわからない道具もたくさんある。それなのに、なぜか見ているだけで心が踊るのは少年の性というものか。
「でも魔術を調べるなら──あった。これしかないですね」
「これは?」
「魔力測定器です。その人に眠る、魔術の素質を計るための道具です」
「魔力測定器……! 資料にあったものだ!」
狐太郎の父親の食い気味な反応に驚きつつ、本当にちゃんと調べていたんだと感心した。そして、どうやって調べて『魔術』に辿り着いたのかはちょっと気になる。
それはそれとして、ここで一つ困ったことがある。実は晴登はこの魔道具の使い方を知らないのだ。ここまで頼れる専門家ムーブをしていただけに、そのカミングアウトをするのは非常に心苦しい。
その時だった。
「──あれ、鍵開いてる。うわ!? だ、誰!?」
「あ、副部長……じゃなかった、辻先輩! いい所に!」
「その声……三浦!? 何で女装してんのよ?!」
なんとナイスタイミングで部室に現れたのは緋翼だった。もっと頼れる先輩の登場に、晴登は内心胸を撫で下ろす。
あと緋翼の言葉で思い出したが、今晴登は女装かつコスプレ中なのだ。パッと見で誰かわからないのは当然だし、狐太郎の
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