第130話『なりたい自分』
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新しい。本当にお前は私たちの息子なのかと、疑いすら持ってしまった。親として情けない限りだよ」
「だから距離を置いた、と」
「そうだ。他にやり方もあっただろうが、何せ気が動転していてね。別居するしか選択肢が思いつかなかったんだ」
「そう、だったんだ……」
狐太郎の父親は唇を噛み締めて、後悔を露わにする。一方、狐太郎も自分が加害者でもあったという事実を知り、頭を抱えて俯いてしまった。
「では、なぜわざわざ海外に?」
「突然獣の耳や尻尾が生える病気なんて、日本で聞いたことがなかったからね。医者として、本気で取り組む必要があったんだ」
「なるほど……というか、医者だったんですか」
「一応ね」
ようやく事の真相が明らかになってきた。
まず彼らが狐太郎から逃げたのは、自分たちの身を守るためだったのだ。あの傷を見れば、そうしたくなる気持ちもわかってしまう。
そして海外に行ったのは、狐太郎の病気について本格的に調べるため。
つまり、狐太郎と狐太郎の両親の主張はどちらも正しかった訳だ。
「それで、何がわかったんですか……?」
ここで最初の質問かつ主題に戻る。
海外に渡ってようやく見つけた、長年狐太郎を苦しめていたものの正体。それは──
「狐太郎の変化は、病気によるものではなく、"魔術"によるものだと」
「「……え?」」
その答えに、思わず素っ頓狂な声が漏れてしまった。狐太郎も顔を上げて、話の続きに興味を示す。
「驚くのも無理はない。私たちだって未だに半信半疑さ。でも今日ここに来たのはその事実を確かめるためでもあるんだ」
晴登と狐太郎の反応は当然だと彼は苦笑した。だが狐太郎と違い、晴登は別の意味で驚いている。
まさか、ここで「魔術」というワードが出てくるとは。しかし、考えてみれば辻褄は合う。狐太郎の特異体質は病気の類だと思っていたせいで、その可能性に考えが至らなかった。
「……ちなみに、どうやって確かめるんですか?」
「こればっかりは、魔術に精通している人に訊く他ない。だが幸運にも、手がかりはすぐ目の前にある」
「え?」
彼らがどの程度魔術について把握しているのか、探るように訊いてみると晴登のことを真っ直ぐ見据えてそう言った。
「白々しいな、君だよ。三浦 晴登君。君は魔術部に所属しているそうじゃないか」
「!?」
どうしてそのことを。……いや、山本から聞いたのだろう。つまり、彼らの目的には晴登も入っていたということか。
と、そこで狐太郎が口を挟む。
「……お父さん、残念だけど、魔術部はマジックを研究する部活だから、お父さんたちが探してる魔術とは別のものだよ。そう
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