第一章
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背番号六十八
佐々木恭介は彼が現役時代を過ごした近鉄バファローズの監督に就任した。
彼はまずフロントから監督就任の要請を受けた時に聞かれた。
「それで背番号どうします?」
「ああ、それですね」
佐々木もその話に即座に反応した。
「何番か」
「はい、どうしますか」
「わしの背番号言うたら五ですけど」
「それは選手の頃の背番号ですから」
「あれはあきませんね」
「他の番号になります」
フロントの者もこう返した。
「やっぱり」
「それやとです」
佐々木は暫し考えてから答えた。
「六十八がええです」
「ああ、あの番号ですか」
フロントの者は佐々木の言葉にはっとなって応えた。
「あの番号でいきますか」
「正直監督になるとか思ってませんでした」
佐々木は自分の素直な気持ちも述べた。
「ほんまです」
「今回のことはですか」
「思いも寄らんことで」
それでというのだ。
「驚いてます、そやけどです」
「監督になられるなら」
「はい」
それならというのだ。
「もうです」
「背番号はですね」
「あの番号、六十八で」
それでというのだ。
「やらせてもらいます」
「そうですか、では」
「はい、宜しゅうお願いします」
フロントの者に確かな声を返してだった。
佐々木は近鉄の監督に就任した、そして就任会見で抱負を語り。
早速チームに入った、すると近鉄を知る誰もが彼の背番号を見て思わず唸った。
「ああ、その背番号か」
「佐々木さんやる気やな」
「ほんまに近鉄の監督やってくれるんやな」
「それも全力で」
「そうしてくれるか」
「あれっ、皆何を言うてるんや」
ある中学生のファンが彼等の言葉に首を傾げさせた。
「監督の背番号に何があるねん」
「あれっ、お前知らんか」
年配のファンが中学生のファンの言葉に応えた。
「あの番号のこと」
「知りません、何なんですか?」
「お前も近鉄ファンやと西本さん知ってるやろ」
「僕小四からのファンで今中一ですけど」
「何や、じゃああの人知らんな」
「あの人って誰ですか?」
「西本さんや」
年配のファンは中学生のファン、まだ子供の顔の彼に言った。
「西本幸雄さんや」
「あっ、近鉄をはじめて優勝させてくれた」
中学生のファンも名前を言われてわかった。
「闘将って言われた」
「そや、佐々木はあの人の頃現役やったんや」
「それは知ってます」
彼にしてもだ。
「あの頃ライトで」
「首位打者も取ったんや」
「左ピッチャーに強うて」
「その西本さんに佐々木は育てられてな」
そうしてというのだ。
「一かどの選手になったんや」
「そうやったんですね」
「他に梨田も有
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