第三章
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「阪神ってシリーズ三回出たわね」
「二〇〇三、二〇〇五、二〇一四の各シーズンにな」
「それでもよね」
「負けてるよ」
兄は口をへの字にさせて答えた。
「三回共な」
「そうよね」
「二〇〇三年はホークスでな」
相手チームはというのだ。
「ダイエー時代の」
「そうだったわね」
「一時王手かけて」
「結局負けたわね」
「強かったからな」
「強力打線でね、ホークス」
「ああ、最後は負けたよ」
妹に忌々し気に話した。
「ホークスその直後大変だったらしいけれどな」
「すぐ後に巨人が小久保さん強奪してね」
「本当にあそこは悪事しか働かないな」
「邪悪の権化じゃない」
巨人というチームはというのだ。
「そうでしょ」
「ああ、全世界の悪いことをな」
「全部やってる様なチームだから」
「あの時だってそうだな」
「巨人に正義の鉄槌を与える」
千佳はこれまでになく強い声で語った。
「それはね」
「野球を愛する人全ての義務だよな」
「それも一度じゃなくて」
正義の鉄槌を与えることはというのだ。
「ずっとよ」
「この世に巨人がある限りな」
「巨人という悪がね」
巨人イコール絶対の邪悪ということだ、かつて人類社会でここまで悪を極めたスポーツチームがあったであろうかいやなかった。
「そうしないといけないわ」
「全くだな、けれどな」
「その巨人をよね」
「その悪を特に身に着けた堀内が監督だったよ」
寿は言った。
「二〇〇五年の巨人は」
「その巨人をギッタンギッタンにしてよね」
「ダイナマイト打線とJFKを柱にした投手陣でな」
「それで優勝したわね」
「その巨人を成敗したうえでな」
まさに堀内の目の前でだ、この瞬間見事堀内は巨人史上最低の監督として解任が決定したのである。
「優勝してな」
「シリーズに挑んだわね」
「ああ、けれどな」
ここで寿はこの世の終わりの様な顔に急変して言った。
「そのシリーズがな」
「壮絶だったわね」
「ロッテにな」
このチームにというのだ。
「言いたくない位にな」
「負けたわね」
「三十三対四な、そして」
そのうえでというのだ。
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