第三章
[8]前話 [2]次話
「最下位は」
「こんなのだと」
「ああ、もうな」
モーニングもコーヒーも美味い、だがそれでもだった。
彼は苦い顔のままだった、そしてだった。
家に帰ると妻の六十年寄り添った蒔絵白髪の丸い顔の小柄な老婆である彼女にこう言われたのだった。
「お昼きし麺でいいわね」
「ああ、ちょっと時間遅くしてくれるか」
「今モーニング食べたからよね」
「そうだよ」
その通りだというのだ。
「だからな」
「わかったわ」
「婆さんの作る飯は美味いけどな」
妻にもぼやくのだった。
「本当にこの十年ずっとな」
「ドラゴンズ調子悪いわね」
「よくなる筈ないだろ」
それこそというのだ。
「落合さん急にクビにして」
「それからね」
「フロントが変なことしてだよ」
「弱くなっていったわね」
「そして今はな」
家でも苦い顔で言うのだった。
「これまでで一番な」
「酷い状況ね」
「あのな、わしは戦争はな」
「私達ずっと名古屋にいて」
「空襲は経験したよ」
もっと言えば戦争中に起こった名古屋の大地震もだ、名古屋は空襲以外にもそうしたことがあったのだ。
「それでも軍隊に入ったことなくてな」
「知らないわね」
「親父が行って左手撃たれて帰って来たよ」
そうだったというのだ。
「親戚で死んだ人もいるさ、けれどな」
「あなたは知らないわね」
「それでも今のドラゴンズは」
このチームの現状はというと。
「悪い意味でな」
「軍隊みたいらしいわね」
「監督が有無を言わせないで」
そうしてというのだ。
「独裁でな」
「意見させないで」
「あれするなこれするなでな」
「すぐに怒って」
「コーチを更迭したりしてな」
そうしたこともあってというのだ。
「懲罰で交代とか干して」
「戦力考えないで」
「トレードに出したりな」
「かなり酷いわね」
「軍隊っていってもな」
この組織の様だと言ってもというのだ。
「日本軍だってな」
「あんな風じゃなかったわね」
「北朝鮮か」
この誰もが知っている究極の独裁国家のというのだ。
「あそこか」
「あの国の軍隊は酷いわね」
「もうな」
それこそというのだ。
「あんな酷い軍隊はな」
「そうはないわね」
「それで軍隊みたいって言ってもな」
「日本軍じゃなくて」
「勿論自衛隊でもないさ」
今の日本の軍事組織でもないというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ