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機動6課副部隊長の憂鬱な日々
第96話:父と子
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そう言って、まだ自由に動かせないだろう手を俺の方に伸ばす。
プルプルと震えているその手を俺は両手で握りしめた。

「あたりまえだろ。姉ちゃんは俺にとって大事な家族なんだから。
 あと、姉ちゃんは全然悪くないんだから謝んなって」

「うん・・・」

その時病室の扉がノックされ、姉ちゃんが返事をすると両親が入ってきた。

「エリーゼ!」

母さんがベッドの上の姉ちゃんに駆け寄る。

「よかった・・・本当に・・・」

姉ちゃんを抱きしめて涙を流す母さんにはじめは少し驚いていた
姉ちゃんだったが、しばらくするとぎこちない手つきで母さんの
背中を撫で始めた。

「うん・・・ごめんね、お母さん・・・ずっと心配させちゃって・・・」

揃って涙を流す2人を眺めていると、不意に後から肩を叩かれた。
振り向くとそこには父さんが立っていた。

「少しいいか」

俺が頷くと、父さんは病室の扉に向かって足を踏み出した。



5分後、俺は父さんと病院の屋上にいた。
風雨にさらされているにも関わらず手入れが行き届いている
ベンチに腰を下ろすとタバコに火をつける。

「タバコを吸うような歳になったんだな・・・お前も」

父さんはそう言いながら俺と同じベンチに腰を下ろす。
俺と父さんの間には一人分のスペースがあいていて、
俺と父さんの心の距離をあらわしているようだった。

「まあね。あ、父さんはタバコ苦手なんだっけ?」

「いや。別にかまわん」

「そう・・・」

それきり、俺と父さんの間には一言の会話も生まれない。
沈黙が辺りを支配する中、俺は夜空を見上げながら、
2度3度と煙を吐き出す。

「ゲオルグ。エリーゼのことだが・・・」

ふと父さんが口を開く。

「改めて礼を言う。助けてくれて感謝する」

父さんはそう言って俺に向かって頭を下げる。
俺はそれを横目で見ながら口を開く。

「俺にはその言葉を受け取る資格はないよ」

そう言って煙をふぅっと吐き出し、言葉を継ぐ。

「俺は姉ちゃんの救出に関しては何もしてない。
 だから、その言葉は俺の仲間に言ってやってよ」

「もちろん、お前の部隊の皆さんには改めてお礼をするつもりだ。
 だが、お前もエリーゼのことは必死で調べていたのだろう?」

顔を上げた父さんは、そう言って俺の方を見つめる。

「ま、それが仕事だからね」

俺がそう言うと父さんは悲しそうな表情で俺を見ていた。
再び2人の間に沈黙が横たわる。

「・・・ところでお前のほうはどうなんだ?怪我をしたと聞いたが」

しばらくして父さんはそんな話題を口にする。

「おかげさまですっかり良くなったよ」

「そうか・・・。大変
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