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渦巻く滄海 紅き空 【下】
七十六 大事の前の小事
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ば」
「それも気にすんな。好きでやってることだからよ」


まだ影はあるものの、いつもの調子に戻ったナルにホッと安堵して、シカマルは笑みを返す。
もっとも両親の話題になった途端、若干苦笑いになったシカマルに反して、ナルは依然として眩いばかりの笑顔を浮かべていた。

そうして、はたと気づく。
慌てて彼女はフカサクを問いただした。

「そういや蛙じいちゃん。妙木山まで歩いて行くのかってばよ?以前、エロ仙人と行った時は一か月かかったけど」


以前、里抜けしたサスケを巡る戦闘にて負傷したナルは、退院後、自来也と共にフカサクから仙術について修行を受けていた。
その時はフカサクから「これも修行じゃ。妙木山まで歩いてきんしゃい」と命じられて、自来也がガックリ肩を落としていたのを、ナルはよく憶えている。
秘密のルートを知っている自来也がいたからこそ辿り着けたものの、本来、迷いの山と呼ばれている其処へはナルひとりだと到底辿り着かなかっただろう。



「ナルちゃんよ…今回は心配いらん。おまえさんは既に蝦蟇との契約済みじゃけんの」

そう自信満々に笑ったフカサクが、見覚えのある巻物を取り出した。ナルの名前も連なるソレは、忍蝦蟇との契約書だ。
当然、自来也の名もある。そしてナルは気づかなかったが、彼女の父であり四代目火影のモノも。

「あ、それ…!」
「ではこの子は預かるけんの」


覚えのある契約書を指差したナルが、次の瞬間、白煙と化す。
消えたナルに驚くシカマルといのの横で、五代目火影である綱手が「【逆口寄せ】だ」となんでもないように答えた。

【逆口寄せ】とは口寄せ動物が契約者を逆に口寄せしたり、自分自身を対象のもとへ召喚する術である。「へぇ〜」と感心するいのの前で、フカサクもまた白煙と化す。


元々、ナルは仙術を既に使えるようになっていたが、より洗練、更に完璧なものにする為に、再び妙木山に山籠もりする流れになったのだ。

打倒ペインの為に。
ナルの師匠である自来也を殺した敵を倒す為に。

実際は、自来也は死んでおらず、今まさに、木ノ葉の里へ急いで戻っているとも知らずに。


ナル同様、妙木山へ向かったフカサクの姿が完全に見えなくなってからようやく、いのはシカマルを肘で小突いた。




「なぁ〜に?ナルを慰めでもしたの?あれだけ元気なかったのに」
「べ、べつにうちの家で飯を一緒に食っただけだっての、めんどくせー」

からかういのに、シカマルは視線を彷徨わせる。
挙動不審な幼馴染に、「アンタって普段はポーカーフェイスのくせに、ナルにかぎってわかり易くなるわよね〜」と呆れ顔で笑った。

「だから俺じゃなくて、おふくろがナルを呼んで来いってうるさかったんだよ!親父もガキ
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