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渦巻く滄海 紅き空 【下】
七十六 大事の前の小事
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、残したところでペインが殺すとは考えにくかったからだ。
【写輪眼】を持つサスケをむざむざ殺すなど、ありえない。

だが逆に、アマルは殺される可能性がある。故に大蛇丸は、負傷した自来也の治癒にあてる為、医療に長けるアマルを連れて撤退に転じたのだ。
けれど結局はペインとの戦闘から逃れるまでの一時的共闘。
ペインが木ノ葉を襲撃すると聞いたところで、大蛇丸が力を貸す道理はない。



「私はここいらでお暇させてもらうわ」



「──それは困るな」





瞬間、大蛇丸の身体が強張った。
数秒、固まった後、ギギギ…と空を見上げる。


そうして眼を大きく見開いた大蛇丸は息を呑んだ。
何故、ここに…と声にならない困惑を感じ取って、顔を強張らせる大蛇丸の視線の先を、自来也は追いかける。

青の空を覆う緑の樹冠。枝葉の合間から射し込む光はやわらかく、淡い輝きを地上へ注いでいる。
その光を背に、人影が見えた。


再度、大蛇丸の様子を窺う。やはり依然として固まっている。
いや、萎縮しているのか。
こんな大蛇丸を、自来也は初めて見た。

空を振り仰いだ自来也は眼を眇める。後光のように光を背負う誰かの姿は未だ見えない。
けれど、急に固まった大蛇丸の様子から窺うに、只者ではないことだけは理解できた。

あの大蛇丸を萎縮させるほどの存在など、今までいなかったからだ。

改めて、自来也は眼を細める。
相手の姿を見極めようとしたが、霞がかかったように、視界が妙にぼやけて見えた。


高い木の上。
澄み渡る空の蒼に溶け込むくらい気配は薄いのに、射抜くような視線が降ってくる。
同時に息が詰まるほどの威圧感と緊張感が、まるで重力のように、その場を満たした。



「久しいな──大蛇丸」


































「よーっし!!それじゃあ行ってくるってばよっ」


万物の始まりと終わりを示す『あ』と『ん』の狭間。
深い峡谷の如き門に意気揚々とした明るい声がこだまする。

とても意気消沈していたとは思えない声色だったが、それが空元気だという事実に気づいていても、五代目火影・奈良シカマル・山中いのは黙って見送りに来ていた。

自来也の師であり、二大仙蝦蟇の一人であるフカサクの隣で、波風ナルは決意に満ちた瞳で自分を見送りに来てくれた面々へ視線を奔らせる。
その内のひとりに、彼女は感謝と信頼の眼差しを向けた。


「ありがとな、シカマル。暗号のこと、よろしく頼むってばよ」
「ああ。こっちのことは気にすんな」
「シカマルの父ちゃんと母ちゃんにもお礼言っといてほしいって
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