第二章
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「殺されるぞ」
「あ、ああそうだな」
「逃げるぞ」
「捕まったら山に埋められるぞ」
「逃げるぞ」
「さもないと本当に殺されるぞ」
口々にこう言って咄嗟に逃げた、女子高生達は脅すだけで追わなかったが彼等は必死に逃げてそうしてだった。
難を逃れたと思った、そして谷田はその日から怖い女の人の下着は派手なものだと思い込む様になった、だがそれは子供の頃のことで。
大人になって就職してサラリーマンになってだ、彼は家に帰ってから妻の麗奈蒲鉾型の目と濃い眉に黒髪をおかっぱにした色白で一五六位の背の彼女にこんなことを言った。
「子供の頃は悪戯もよくして」
「誰だってそうでしょ」
「悪ガキって言われてて」
そしてというのだ。
「県内で有名なヤンキー高校の人のスカートめくろうとしたら」
「どうしたの?」
「あっちでめくれて」
このことをありのまま話した。
「見えたけれど」
「そんなことがあったの」
「赤とか黒のティーバックとか白のスケスケとか」
「私全部持ってるわよ」
「知ってるよ」
結婚しているからだとだ、妻に返した。
「それはね、ただその時は怖い人はそうした下着穿いてるってな」
「思ったのね」
「そうなんだよ、殺すぞとか言われたし」
「ヤンキーの人達の挨拶ね」
そうした言葉を出すことはとだ、妻は返した。
「もう」
「今思えばそうだけれど」
「その時はなのね」
「怖かったし」
「それでなのね」
「そう思ったんだよ、悪戯しようとして」
それでというのだ。
「見てしまったけれど」
「それがイメージになったのね」
「うん、まあ中学になった頃から」
その頃からともだ、夫は話した。
「悪戯とかしなくなったけれど」
「成長して」
「それでもそうした下着はずっと」
「怖い人のイメージだったの」
「そうだったよ」
「そうなのね」
「うん、それで今の下着は」
部屋着の妻に問うた。
「どんなのかな」
「コバルトブルーよ」
「普通だね」
「黒のティーバックにする?」
「いや、青のままでいいよ」
こう妻に答えた、そして夕食を食べて風呂に入って一緒に寝た。かつての悪ガキも今では普通のサラリーマンであり夫だ、彼はベッドの中でこう思った。
悪ガキの悪戯 完
2023・9・21
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