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くらいくらい電子の森に・・・
第三章 (2)
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…とっさに口にしてから、内心舌打ちした。
「……え? ワンピース、似合わない……?」
信じられないことを聞いたように、柚木が聞き返してくる。
「なに急に…あ、嫉妬してるんだ。紺野さんと私が二人っきりで会うのがイヤなんだ!」
おちょくるような口調。…だめだ。もしそのまま話を合わせて「ああそうだよ、だから行くな」などと言ったところで、柚木は必ず行く。そもそも僕に気がないのに、僕の言うことを聞くわけがない。じゃあ今僕が見つけた、奇妙な附合を柚木に教えるべきなのか…

というか、よしんば事実を教えたところで「まぁ怖い、私手を引くわ」なんてしおらしいことを、この柚木が言うだろうか。面白がって「事件を解決するのは私よ!」とか赤川次郎の女子大生探偵みたいなことを言い出しかねない。それなら紺野さんに興味を失いそうな事実をでっち上げてでも、こいつを遠ざけるしかない。例えば…
…よし、紺野さんはガチホモってことにしよう。僕は着せ替えソフトをエサにハッテン場の公衆便所で迫られて無理やり尻を奪われた…これで百発百中でドン引きだ!…いや待てよ、もし接触前に電話かけられたら…

「……な、なに黙ってるの…図星とか言うんじゃないよね……やだ、そんな顔しないでよ…私、そんなつもりで来たんじゃ……」

――しまった。考え事に没頭してしまっていた。慌ててがばと顔を上げると、動揺する柚木とがっちり視線が合ってしまった。柚木は顔を赤らめて視線をほどいた。そして踵を返してメッセンジャーバックを掴み、立ち上がった。
「――ごめん、そういうつもり、ないから」
うわ、告ってないのに振られたよ!人としてショックでかい!…呆然と立ち尽くす僕の脇を、柚木がすり抜けていく。
「ちょ……」
待て!話は済んでない!そしてパソコン忘れてる!僕は咄嗟に柚木の腕を掴んだ。
「痛……」
「あ、ごめん……あのさ」
何を言うのか決めてもいないのに「あのさ」とか言ってしまった…手がじっとり汗ばんでくる。
……僕はいま、どんな顔をしているんだろう。
「………やっぱり、良くないよ、紺野さんは。見ず知らずの女の子に、安易にこんな危ない橋を渡らせるなんて……」
「…………」
「…あの…群馬のご両親も、心配するよ?」
……説得力ねぇ――――! 何言ってんだ僕は! いま群馬のご両親は関係ないだろう!
でも柚木は意外にも、僕から顔を背けたまま、黙って聞いていた。これは、結果はどうあれ最後まで聞いてくれるかもしれない……
「そういう諸々も含めて、ちょっと確かめたいんだ。…明日の約束、代わってくれない?」
柚木が顔を上げた。…もう、いつも通りのとりすました顔に戻っていた。

「…好きにしたらいいじゃない」

そしてメモ帳を一枚破ると、僕に渡した。
「明日3時 新宿「ジョルジュ」待ち合わ
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