第三章 (2)
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木に無理やり押し込まれ、ノーパソを奪われ、無理やり目を見開かされて起動させられた。彼女の横暴の前には、セキュリティシステムも意味がない。
…所詮、柚木にとっては僕なんて「網膜」くらいの価値しかないのか…腕枕とか寝物語とか、超あり得ない話だったなぁ…
起動画面に押し付けられるようにして目を見開かされながら、そんな哀しい事を思った。
――そして今、ビアンキのコーディネートについて、ダメ出しを受けている。
「柄ものと柄ものは難しいんだから、よく知らない人が簡単にできるもんじゃないの!…ほら、こっちの白い帽子のほうがすっきりするでしょ。…あ、こっちの紺のワンピースもかわいいじゃん、こっちにしなよ!靴はねぇ…これ!」
…着せ替えソフトのロゴをみた瞬間、僕のことを散々変態呼ばわりしたくせに、自分は完全に着せ替えごっこを楽しんでいる。それに悔しいが、女の子だけあって柚木のほうがセンスがいい。ビアンキも心なしか嬉しそうだ。
「ほーら、ビアンキちゃんかわいくなった!センスの悪いお兄ちゃんで困ったわよねー」
「ハイ!」
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――ハイって言った! 今この子、ハイって言ったよ!ご主人さまのコーディネートはセンスが悪いって断言したよ!
「あのひと、よくこんなの拾ってきたよね」
じんわり打ちひしがれている僕の方を見ず、柚木がつぶやいた。
「謎だよね。なにやってる人なんだろう」
うっとりする場面じゃない。大の社会人がマニアックな着せ替えツールを拾っておおはしゃぎだぞ?そこは気持ち悪がるところだろう。さっきは僕のことを変態呼ばわりしたくせに。あの時の紺野さんのはしゃぎっぷりを動画に撮って見せてやりたいぜ。
…というか、見た目が違うと、女子の扱いはこうも変わるものか…
ダメだ。柚木といると、ひたすらへこんでいく…壁にもたれて、膝に顔を埋めた。なんか疲れた。柚木が帰るまで、こうしていよう…
「ねぇ、このソフト認証キーとかあるの?」
「…いや、なかったよ。ネットで拾ったって言ってたし、その辺ゆるいんじゃないの」
「そう、じゃ貸してよ!」
…すこし、顔を上げた。
「借りてどうすんの?」
「どうするって、着せ替えるの」
「…紺野さんにもらったMOGMOGを?」
柚木は、はっとしたように瞳を開いた。
「え!? 聞いたの!?」
……ビンゴ。
うっすら、そうじゃないかなと思っていたんだ。僕は、膝を立てて座りなおした。
「あの喫茶店でさ、封筒もらったとき、すごい嬉しそうにしてただろ。…あの中に入ってたの、金じゃないよね」
カマをかけられたと気づいたんだろう。柚木は眉を吊り上げて僕を見返した。怒り出すかな?と思って、少し待ってみた。…意外にも、柚木は無言で僕を見返すだけだった。どこ
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