第三章 (2)
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「大体ね、姶良はセンスがわるいの!柄ものに柄ものの帽子合わせたりして!」
―――柚木が、来てる。
―――僕の、6畳1間のアパートに、柚木が一人で来てる。
柚木に『カスタマイズ・ビアンキ』を見られた。
「ちょっと!なにこれ!どういうこと!?」
大騒ぎしはじめた柚木からノーパソを取り上げ、教室を駆け出した。
「あっ!こら待てっ姶良!!」
…冗談じゃない。ビアンキのセキュリティは何故か柚木には甘いし、勝手にいじられてまたあのソフトの起動音が教室で鳴り響いたりしたら、僕はサークルに顔を出せなくなる。下宿まで走って5分、さすがに女の足では追ってこれまい。
―――そうやって、まいたつもりの柚木が、僕の部屋にいる。
…息を切らして下宿に辿り着くと、ビアンキの自転車が出入り口の古びた鉄パイプにチェーンでつないであるのが見えた。ゆっくりと目を上げると、柚木が僕の部屋の前に。
「…あんた、ばかでしょ」
「………へ」
「来てるでしょ、私。ポタリング部の新歓コンパで終電を逃した日」
………。
学校に近いと忘れ物したとき便利、などという小学生みたいな理由で、学校激近物件を選んで借りたのが、そもそもの間違いの元だった。
飲みで終電逃した奴とか、家に帰るのが面倒になった奴がちょくちょく転がり込むようになり、いつしか僕の部屋は、サークル連中の溜まり場になっていった。
さすがに柚木は絶対に来ないが、一度だけ、不可抗力で僕の部屋に泊まったことがある。
もちろん、ほかにも終電を逃した連中が何人も転がり込んできていた。春先で、まだ花冷えがする時期だったけど、とにかく人数が多いし、先輩たちの手前もあり、柚木には薄いタオルケットしか回してやれなかった。寒そうで可哀想だったから、彼女が寝付いた頃に、コートをこっそり掛けてやった。……あの時は柚木に会って日が浅かったせいか、自分の部屋で酔って寝息をたてているキレイな子に、単純にどぎまぎしたものだった。
いつか、恥じらう彼女に腕枕をしてやったりして、片手でウイスキーなんかカランカラン回しながら、この日のことを「…あの時は、ちょっとドキドキしてたんだよ…?」などと寝物語に話して聞かせたりする日が来たりして!…などと見果てぬ妄想に走り、そんな未来の自分の為に、柚木の寝顔を事細かに観察したり、何かに例えてせかせかメモしたりしたものだった。ついには「二人の思い出の一コマなのに、この部屋汚れすぎだろう!」とか先走ってしまい、コロコロローラーでじゅうたんの掃除を始めたあたりで柚木が「ぞり…ぞりり…ぞり」という不気味な音に驚いて目を覚ました。枕元にうずくまってぞりぞりローラーを転がしていた僕は、嫌というほどひっぱたかれたのだ。
…などと昔のことを思い出してぼんやりしているうちに、柚
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